2015年7月16日木曜日

第1143話 あじ酢よければ えび丼またよし (その4)

築地場内の「小田保」でビールを飲んでいる。
合いの手は真あじの酢〆だ。
列島の近海が育んだ海の幸に舌鼓をポンポン、
ついでのもう一丁、ポンの巻である

このサカナは物価の優等生じゃなかろうか。
昭和の時代、サンマやイワシより、
多少割高だった記憶があるが、今やもっとも安価な魚種となった。
しかもスーパーで手に入る生のサンマとイワシは
生食可能なものが少ないけれど、
アジに関してはほとんどが刺身でイケる。
これは貴重な現実でっせ。

さて、ビールの中瓶を2本空けて肝心の食事だ。
冬場のかきバタ&かきフライ定食に匹敵する、
春・夏の必食アイテムはえび丼でキマリ。
まっ、春夏秋冬、通年食べられるんだけどネ。
大ぶりの海老に存在感あり
洋食屋でもとんかつ屋でも
滅多に出会えないのがえび丼。
これで1300円はお値打ち以外の何物でもなかろう。
かつ丼の代わりに海老フライを用いたドンブリだが
実に立派なの海老である。

海老は比較的高価な食材につき、スーパーは言うに及ばず、
奮発してデパ地下で買い求めた海老フライでも
そう簡単に満足感は得られない。
なぜだろう?
ズバリ、コロモが厚すぎるからだ。
見栄えをよくするため、二重、三重にコロモを膨らませすぎるのだ。

最近はあまり見かけなくなったが観光地の土産物の上げ底ネ、
アレと同じ発想が日本人のセコさをあからさまにする。
戦後70年、もうこんなマネはやめにしましょうや。
島国根性と貧乏根性のコラボレーション、ここに極まれり。

その点、「小田保」の海老フライは舌も心も豊かにしてくれる。
食べる歓びを実感させてくれるのだ。
ただし、この日はごはんがやや柔らかく、ここは改善してほしい。

以前、中米系アメリカ人の旧友が来日した際、
案内してえび丼をごちそうしたことがある。
彼女、感涙にむせびはしなかったが
生涯ベストのガンバス(スペイン語で海老)料理だと断言した。
あのガンバス・アル・アヒージョよりネ。

ヘビーな昼めしは極力避ける習慣のJ.C.、
この日は例外中の例外であった。
周囲の女性を食事に誘うときに
朝・昼の築地と、夕・夜の浅草は二大人気エリアである。
経験上、これは間違いなく言い切れる。

貴方も意中の女性を口説き落としたいなら
ぜひ、築地「小田保」のえび丼をふるまってお上げなさい。
効果てきめんで明るい未来が待ってますから―。
”海老で鯛を釣る”とはこのことであります。

=おしまい=

「小田保」
 東京都中央区築地5-2-1  6号館
 03-3541-9819