2015年7月1日水曜日

第1132話 偶然の澄ましバター (その2)

根津の赤札堂に到着。
鮮魚売り場に直行する。
ややっ、本日はまぐろの特売日であるらしかった。
かなりの数のパックが並べられている。

本まぐろの大き目なサクが赤身で600円。
安い!
中とろだと800円になる。
これまた安い!
ともに一人では食べきれぬほどの量があった。

まずは産地をチェック、これは重要。
おやまあ、なんと珍しい、鳥取県ときたもんだ。
鳥取というからには境港に水揚げされたものだろう。
今の時期は日本海の夏まぐろが美味しい。

玄界灘から山陰沖を経て能登半島から佐渡島へと彼らは進む。
世に名高い下北・大間のまぐろが大年増なら
佐渡のそれは処女である。
脂のノリは少ないが、さわやかな涼気が魅力なのだ。

20個ほどあったろうか・・・、赤身のパックに目を凝らす。
サカナの目利きはそれなりに培ってきたから
良し悪しの判断には自信を持っている。
まぐろの赤身は見た目きめ細やかなものよりも
表面に人間でいうところのストレッチマーク、
いわゆる肉割れが生じているほうが好ましい。

理想的なサクを一つ選び、お次は山芋だ。
こちらは青森産長芋の小さな真空パックが150円と値ごろ。
これで山かけの材料は揃った。

あとはマカロニサラダである。
マカロニは自宅に買い置きがある。
トマト・きゅうり・玉ねぎ・パセリも冷蔵庫にバッチリ。
あとは玉子をゆでれば、それで済む。
ハムは切らしているが、なくてもまあいいや。

自宅へ戻り、サクを切り分ける。
「弁天山美家古寿司」四代目に倣い、
薄めのスライスをおよそ10切れ。
山かけ用のブツは8個。
こちらは生醤油と日本酒同割の下地に沈めてヅケにしておく。

刺身のほうは生わさびをすりおろしてビールとともにやる。
ほどよい酸味の若い本まぐろは
その本領を発揮して無条件で旨し。
山かけは常温の清酒・ねのひとともに味わう。
これまた、文句のつけようがないぞなもし。

=つづく=