2015年10月21日水曜日

第1212話 京成沿線を歩き続けて (その4)

 ♪  飲めば飲むほど うれしくて
  しらずしらずに はしご酒
  恋は小岩と へたなしゃれ
  酒の肴に ほすグラス
  よってっらしゃい よってらしゃい お兄さん ♪
           (作詞:ほぞのなな)

宇多田ヒカルのお母さん、
今は亡き藤圭子が歌った「はしご酒」。
いや、実に名曲でありましたなァ。

その小岩にやって来た。
 ♪ は~るばる来たぜ こ~いわ ♪
てな感じである。

小岩で一杯となれば真っ先に寄りたくなるのが
じゃが芋入りのもつ煮込みがユニークな「大竹」だ。
おそらく小岩でナンバーワンの酒場であろう。
ところが当日は未踏の店に狙いを絞っていた。

その名は「江戸政」。
”江戸”を冠した酒場となると、
どこをおいても大塚の「江戸一」を推さねばならぬ。
それほどの名舗だが
江戸川区・小岩の「江戸政」もまたすばらしいから
ぜひ一度お試しくだされと耳に届く声、少なからず、
よって遠征に及んだわけだ。

到着したのは16時半過ぎだったと思う。
入店すると目の前に4~5名が止まれるカウンター。
左手には卓数こそチェックできなかったが
小上がりのあるレイアウト。
17時前なのにそこそこ先客の影があった。

厨房には店主と思しき旦那が独り。
女将もいなけりゃバイトの若者もいない。
忙しさにほとんどてんやわんや状態だ。

「お手空きで生ビール!」―
お願いしたらば、包丁の手を止め、
オモテに出てきてサーバーから注いでくれた。
突き出しは蓮根・にんじん・しいたけ・竹の子が散在する筑前煮風。
これがチェーン居酒屋のようにおざなりでなく、
心のこもった佳品であった。

残念なのは中生としてはあまりに貧相なサイズのジョッキ。
他店の小生に等しい。
まっいいか、グビッとあおればすぐカラになる。
何せ長距離を歩いてきた身、ノドの渇きは相当だった。

手間ヒマ掛けさせては申し訳ないから瓶ビールを追加注文。
「エッ、もう飲んじゃったの?」―店主応えて
驚きの眼差しに見舞われたのでした。

=つづく=