2016年7月27日水曜日

第1412話 クラムだって恋をする (その5)

吉野通りと明治通りが交わる泪橋の交差点。
ここは荒川区と台東区の区境にあたっている。
行き交うクルマの多い明治通りを横断して
吉野通りを真っ直ぐ南下して行った。
途中、今戸神社と待乳山聖天に立ち寄ったので
かれこれ1時間近くは歩いたろうか―。

ちなみに今戸神社は新撰組きってのイケメン、
沖田総司、終焉の地といわれている。
かたや待乳山のほうは時代小説の第一人者、
池波正太郎、出生の地である。
これも何かの縁(えにし)であろう。

待乳山聖天の脇に旧今戸橋がある。
かつてこの橋の下に山谷堀があり、
大川から吉原に通じていたが
今は埋め立てられて山谷堀公園となっている。

 ♪   梅は咲いたか 桜はまだかいな
   柳なよなよ風次第
   山吹や浮気で 色ばっかり
   しょんがいな


   浅蜊とれたか 蛤やまだかいな
   鮑くよくよ片想い
   さざえは悋気で角ばっかり
   しょんがいな


   柳橋から小舟を急がせ
   舟はゆらゆら波しだい
   舟から上がって土手八丁
   吉原へご案内       ♪


端唄・小唄に唄い込まれたように
古くは神田川最下流の柳橋から
猪牙舟で大川をさかのぼって
今戸橋をくぐり、吉原に通うのが粋筋の遊びとされた。

まっ、それはそれとして
J散歩は歌舞伎「助六」の舞台となった花川戸を抜け、
吾妻橋西詰にたどり着いた。
目の前には浅草1丁目1番地1号の「神谷バー」がある。
当ブログでたびたび紹介した、
マイ・フェイヴァリット・スポットだ。

陽が落ちるにはまだ相当の時間がある。
晩酌には少々早いが誰に気兼ねをするじゃなし、
何のちゅうちょもなく、2階へと階段を上った。
どこの階段かって?
もちろん「神谷バー」ですヨ。

=つづく=