2016年7月19日火曜日

第1406話 心から好きだよ ピーナッツ (その4)

そんな歌謡シーンがくり拡げられた1959年。
ザ・ピーナッツは彗星のごとく、
もとい、妖精のごとくデビューをはたしたのだった。

振り返れば当時の彼女たちは洋楽のカバーばかり。
オリジナル曲がほとんどない。
翌年リリースされた「心の窓にともし灯を」が目立つ程度だ。
この曲にしたってB面扱いでA面は「悲しき16才」、
ケーシィ・リンデンのカバーである。
彼女たちのオリジナル・ヒットは
1962年の「ふりむかないで」まで待たねばならなかった。

この年も名曲・佳曲が目白押し。
「江梨子」(橋幸夫)、「山男の歌」(ダーク・ダックス)、
「寒い朝」(吉永小百合&和田弘とマヒナスターズ)、
「電話でキッス」(ダニー飯田とパラダイスキング)、
「ヴァケイション」(弘田三枝子)、若いふたり(北原謙二)、
ルイジアナ・ママ(飯田久彦)、可愛いベイビー(中尾ミエ)と
相当数の洋モノが紛れ込んでいる。

ちなみにレコード大賞曲は
「いつでも夢を」(橋幸夫&吉永小百合)。
レコード大賞の黎明期、作詞・作曲においては
この7日に亡くなった永六輔&中村八大が大活躍した。
’59年(第一回)の「黒い花びら」に続いて
’63年(第五回)の「こんにちは赤ちゃん」も同じコンビの作品。

これに対して作曲家・吉田正が
’60年(第二回)の「誰よりも君を愛す」、
’62年(第四回)の「いつでも夢を」で受賞している。

’62年におけるマイ・ベストスリーは

① 赤いハンカチ・・・石原裕次郎
② 下町の太陽・・・倍賞千恵子
③ コーヒー・ルンバ・・・西田佐知子

この頃になると、演歌が綺麗さっぱり姿を消している。
低学年から高学年に成長した小学生・J.C.の趣味が
変わったのではなく、
時代が変遷して演歌の氷河期が到来したのだ。

余談だが倍賞千恵子の小学生時代の家庭教師は永六輔サン。
これはほとんど知られていないエピソードではあるまいか―。
そして役者としては芽が出なかったものの、
司会者として大成した関口宏の奥様が西田佐知子サン。
こちらのほうはみなさんご存じですネ。

もう一つ、佐知子サンが歌って大ヒットした「コーヒー・ルンバ」は
ザ・ピーナッツとの競作でありました。
ピーナッツ版もけして悪くないけれど、
声色と曲調の一体感は西田版が優れており、
大衆はそこのところをよく理解し、評価したのでありましょう。
そう、往時の音楽ファンは耳が肥えていたんです。

=つづく=