2016年9月20日火曜日

第1451話 俺らはバカか? (その5)

そうしてこうしてたどり着いた松戸。
時刻は17時を回ったところで
汗はだくだく、ノドはカラカラ。
とにもかくにもどこか酒場に飛び込まねば―。

入店したのは旧知の「ひよし」だ。
開店後まもないようで先客はゼロ。
オバちゃんが一人で仕込みだか、
食材の補充だかに勤しんでいた。

よく冷えたサッポロ黒ラベルで生き返る。
それにしても冷房の効いていない店内が暑い。
カウンターの傍らに置かれた団扇に手をのばさずにはいられない。
でも、団扇なんかじゃ汗は止まらない。
まっ、自分で蒔いた種だから、しゃんめいヨ!

突き出しはきゅうり&かぶの浅漬けである。
愚にもつかぬ突き出しをオッツケてくる店が少なくないなか、
かえってこんなシンプルなモノのほうがありがたい。
殊に夏場の浅漬けはけっこうだ。
好物の焼きとんをいく前に何か一品ほしい。

入店から20分ほどして厨房にアンちゃん登場。
オバちゃんとのやりとりから親子らしい。
これでやっと店側の受け入れ態勢が整ったわけだ。

壁の品書きで目にとまったのはコチとアイゴの刺身だった。
コチは今が旬、好きなサカナである。
アイゴは極めて珍しい。
タイ類に似た体系をしており、背ビレはより険しく鋭く長い。
ヒレのトゲに毒を持ち、刺されると激しく痛むそうだ。
主に西日本で漁獲される。

沖縄料理にスクガラス豆腐というのがあるが
これはアイゴの幼魚を塩辛にして豆腐に乗せたもの。
那覇の郷土料理屋で食べたことがある。
あまり美味しいものではなかったけれど―。

「ひよし」を目指したときから目当ては焼きとん。
生モノは念頭にまったくなかったから食指は動かなかった。
牛すじ大根煮、肉味噌オムレツ、当店の名物料理らしい。
ん? 焼き豚にんにくビーフって何だ?
豚と牛が同居する一皿のようだ。

豚レバーサイコロステーキを見つけた。
レバはあとで食べるから重複する。
にもかかわらず反射的に注文してしまった。
豚レバが好きなんだねェ。

=つづく=