2019年5月29日水曜日

第2142話 山ほどの山菜をいただきまして (その2)

わが人生で初めて山菜のこごみを揚げている。
ふと、思いついてコロモに玉子を落とさず、
ふるった薄力粉と冷水だけにしてみた。
このほうがあっさり揚がるような気がしてネ。

揚げ油はコーンに胡麻を少々。
はたして、これまた、素人の手なぐさみとしては
上々の出来映えといえるレベルだ。
ピンクのヒマラヤン・ロック・ソルトをガリガリやって食すと、
多少の噛み応えがあるものの、実にやわらかい。
ほどなく山野の香りが口中から鼻腔に抜けてゆく。
素材のタチがよかったのだろう、
過去に気づかなかった、こごみの魅力を知る思いがした。

天ぷらだけではもったいなく、胡麻和えを作る。
くだんのすり鉢とすりこぎで
金胡麻をすり、生醤油と砂糖を加える。
先っちょのクルクルを残すために
努めて粗く刻んだこごみと和えた。
う~ん、これも悪くないねェ。

山菜となれば、
わらび・ぜんまい・たらの芽あたりが思い浮かぶ。
殊にわらびとぜんまいは
日本そば屋の定番メニュー、山菜そばの主役と言えよう。
しかし、J.C.は山菜そばを注文したことがない。

なぜか?
立ち食いそばのみならず、
老舗のそば屋ですらパック入りの水煮を使うからだ。
そして、そのほとんどが中国産の安価なもの。
中国の食品に偏見を持つわけじゃないが
とてもとても、食指が動くものではない。

最後に、行者にんにく、別名・アイヌネギである。
この山菜を最後に食べたのは一昨年の6月。
ところは葛飾、柴又駅前の居酒屋「春」だ。
寅さんの銅像を見ながらつまんだのは醤油漬けだが
風味は残っていたものの、あまりにしょっぱくて
酒のつまみより、飯のおかずにふさわしいものだった。

行者にんにくもまずは天ぷら。
こごみほどではないにせよ、
野趣あふれる個性は失われていない。
残りは生醤油と日本酒を同割にして漬け込んだ。

こちらは今も冷蔵庫にあり、主として晩酌の友。
数日前に生姜焼きの要領で
豚バラ肉と炒めてみたら、存外にイケた。
いずれにしろ、秋田の友人に感謝する日々を送っている。