2019年5月6日月曜日

第2125話 さまざまなこと思い出す洋食屋 (その2)

品川区・荏原の「キッチン TAIYO」。
開いたメニューを目で追いながらビールの中瓶をお願いした。
銘柄はキリン・クラシックラガー。
自分には苦すぎるビールながら、ほかに選択肢はない。
案の定のビター・テイストだけれど、
エビスやモルツよりは舌になじむ。

最初に通したのはカニサラダのハーフサイズ。
ハーフの用意はありがたい。
ビールとともに味わいながら、慌てずにメインの選択ができる。
ところが、このサラダはかなりの量だった。
レタス中心の生野菜に缶詰のカニが和えてあり、
二人で分けてちょうどよさそう。
一瞬、フルサイズと間違えたのではと疑念が湧いた。

サーヴしてくれたセコンドの顔をよく拝見したら
思ったよりずっと若い。
後姿の頭頂部の髪が薄かったので早合点してしまった。
どうやら店主の息子さんらしい。
となると、接客の女性は嫁さんで
親子三人の家族経営ということになる。

サラダのあとに自家製ハムのタルタルソース添えが登場。
ん? コレはビールのお通しのようだが
有料なのか、無料なのか判然としない。
まっ、いいでしょう。
(会計時にサービスと判明。サラダもハーフで間違いナシ)

それにしてもお通しとしては立派。
ハムというよりコールドポークといった風である。
そして魚介でもないのにタルタルソースとはネ。
ここでまた思い出したことがあった。

ニューヨークのイタリア料理店で
たびたび注文したのがヴィッテロ・トナート。
冷製の仔牛肉に裏ごししたツナ缶と
マヨネーズを合わせたソースを添える。
最初は仔牛とツナのミスマッチにたじろいだものの、
これが実によくコラボした。

ビールのお替わりとともに
択んだメインディッシュはポークカツレツ。
ポークソテーではせわしないが
カツレツなら多少冷めても美味しくいただける。

ストーヴ前に陣取ったシェフの調理を見ていてビックリ。
パン粉を付けたロース肉をフライパンで焼き始めた。
すぐに鉄製の蓋をして、そのまま放置すること10分。
ふ~ん、油で揚げないんだネ。
またまた思い出したのは浅草・花川戸の「桃タロー」だ。
焼きカツの有名店だが、そこのスタイルにそっくり。

ガルニはすべて温野菜で
いんげん・にんじん・キャベツのブイヨン煮とポテトフライ。
カニサラダ、コールドポークを含め、
すべてが水準をクリアしており、昭和の味を存分に楽しんだ。
そして何よりも印象深かったのは
この洋食店が思い出させてくれた、さまざまなこと。
松尾芭蕉が来店したなら、
いったいどんなことを思い出すのでありましょうや?

「キッチンTAIYO」
 東京都品川区荏原1-17-4
 03-5498-9898