2019年5月13日月曜日

第2130話 「岸辺のアルベム」の岸辺へ (その2)

小田急小田原線・和泉多摩川。
駅前のリバーサイド・モールにある「特一番」に入店。
直線と曲線を合わせた形のカウンターがあり、
テーブルは見当たらない。

取るものも取りあえず
通したビールはサッポロ黒ラベルの中瓶。
そうしておいてメニューを手に取った。
主力は圧倒的に麺類で一品料理はチャーハンと餃子のみ。
ほかには、”すぐできるおつまみ”として
チャーシューとシナチクがあるだけだ。

「特一番」といえば、
旭川動物園に近い地元の人気店。
当店はその流れを汲むという。
北海道のご当地ラーメンの御三家は
札幌→味噌 旭川→醤油 函館→塩
で揺るがない。

好みの上では函館の塩が一番ながら
「特一番」は旭川系、ここは醤油でいくしかあるまい。
おもむろに醤油らーめん(600円)をお願いした。

ここの麺類はすべて醤油・塩・味噌から択べ、同価格。
不思議なのは、チャーシューめんが780円で
ネギらーめんが800円の値付け。
今やネギは焼き豚より高いんかい?
おそらくネギらーめんはネギと焼き豚の細切りを
トッピングしたネギチャーシューめんのことなのだろう。

湯気を立てている醤油らーめん。
目を奪われたのは油浮く漆黒のスープだ。
「真っ黒いスープは見た目ほどしょっぱくない」―
なあんてセリフはよく耳にするが
ここのは見た目通りで偽りなし、とてつもなくしょっぱい。
飲み干すどころか半分もムリだろう。
ただし、味は悪くないし、
中太ちぢれプリプリ麺との相性もよい。

具材はチャーシュー・シナチク・海苔。
もも肉使用のチャーシューは薄いながらも大きく、
中心部にほんのりとピンクの色づきを残す。
全体的に旭川ラーメンとしての水準に達していた。

パラパラながら13時を回っても客足は絶えない。
すべて地元の人たちで流れ者はわれ一人。
地域にしっかり根を下ろす様子が読み取れる。
営むのは中高年の域に差し掛かった二人。
おそらく夫婦と思われた。

女将は歌手の秋元順子によく似ている。
店主は井上順と根津甚八を足して二で割った感じ。
11時半から0時までの通し営業をどうやって回すのだろう。
ピーク時や深夜は助っ人が現れるのかもしれない。
お二人の健康と健闘を祈る。

=つづく=

「特一番」
 東京都狛江市東和泉3-11-17
 03-3480-5039