梶山季之の稿のつづき。
1962年の「黒の試走車」で
一躍流行作家の仲間入りをはたした梶山は以後、
45歳で急逝したにもかかわらず、
膨大な作品群を残している。
野際陽子のデビュー作で、
TVドラマ化されて人気を博した「赤いダイヤ」。
ソウルに愛着した作者が
誇り高き妓生(キーセン)を通して
第二の故郷に捧げたオマージュ「李朝残影」。
古本業界に暗躍するプロフェッショナル、
背取りを描いた「せどり男爵数奇譚」。
代表作にはそれぞれ、
梶山ならではのキレ味鋭い才覚が
圧倒的な筆力によって
原稿用紙に散りばめられている。
吉行淳之介が編んだ「酒中日記」、
および「また酒中日記」は酒飲み文人たちによる、
酒飲みエッセイ集のオムニバスなのだが
これでもか、これでもかというくらいに
「魔里」が登場する。
この売れっ子作家、「また酒中日記」の文中に
(「初島に行き女を買う。
女の部屋でビールを飲みながら取材」だの、
「九時すぎ恒例の“ドボン大会”。
草柳大蔵、藤島泰輔、大隈秀夫、村上兵衛、
渡部雄吉といったメンバー。
ウィスキーをガブ飲みして
五千円ぐらい負ける」だの、
世間をはばかる供述のオンパレードだ)
痛飲・賭博・買春と、
飲む・打つ・買うの三拍子を揃えた上に
友人を密告するオマケまでついて
まさに型破りな無頼漢の面目躍如である。
今どきこんな豪傑、おらしまへん。
そうそう、議員になる前の蓮舫とも「魔里」で飲んだ。
彼女がキャスターを務めるTBSラジオの番組、
「アクセス」に出演してたのが縁である。
番組内でもレンちゃん、
シンちゃんと呼び合う仲だった。
そう、J.C.のファーストネームは
シンイチなんざんす。
これ、本邦初公開。
ひと月ほど前、西銀座に立ち寄った際、
「魔里」に行ってみたらビルに袖看板は
残っているものの、店は閉じており、
営業はしていない様子だった。
ママも歳だから閉業したんだろうな?
すると、つい先日。
一通のメールが舞い込んだ。
「魔里」に居た、E美子からである。
=おしまい=
(サブタイトルを変えてハナシは続きます)