接客係が戻って来た。
「こちらマッドクラブになります」
「どこで獲れたのかな?」
一瞬、返事に詰まったが
「オーストラリアです」
マッドクラブはノコギリガザミのことで
マングローブガニとも呼ばれる。
専用のペンチで叩きつぶし、
指先をべとべとにしてしゃぶりつく。
溶き玉子と合わせたチリソースは
マントウで拭いとってパクリ。
相方にシンガポールはラッフルズホテル発祥の
シンガポール・スリングをすすめる。
久しぶりにつき、当方もおつき合い・
赴任中にそのラッフルズで飲んで以来だから
37年ぶりの美酒である。
このカクテルのベースはジン。
そして重要な役割を担うのが
チェリー・ブランデー
(多くの場合、チェリー・ヒーリング)。
そしていかにも南国、パイナップルジュース。
グレナデン・シロップも使われるが
かなり甘くなるので、どちらかと言えば女性向き、
男には向かない。
もともと男の飲み物ではないがネ。
とにもかくにもチリ・クラブを平らげた。
シンガポール時代から思っていたが
それほど旨いもんじゃないんだ。
やはり蟹は冷たい水域に生息するヤツが最高。
北海道・ロシア・アラスカに限るヨ。
追加料理は外してならない海南鶏飯。
ところがこれが感心しなかった。
鶏もも肉の旨みが足りない。
ジャスミン・ライスはまずまず。
テーブルに据え置きのソース類がおざなり。
ちょうど2週前に訪れた麻布「海南鶏飯食堂」と
どうしても比べてしまう。
あちらの鶏肉はよりジューシー。
薬味の盛り付けもずっと美しい。
居心地とアトモスフェアはこちらが勝る。
田町駅に戻る道すがら
一度お連れしたことのある日比谷のガード下、
北海道居酒屋に行きたいと言うので了承。
いいでしょう、有楽町で飲みましょう。
「威南記海南鶏飯 日本本店」
東京都港区芝浦3-4-1
03-5439-9120