2024年2月9日金曜日

第3468話 無理はよそうぜ 体に悪い

雨がみぞれに変わり、ついには小雪となった午後。
「鬼畜」を観に、またもや神保町へ。
開場の1時間半前には
チケットを購入して、ふと左手を見たら、
いつも長蛇の列の「キッチン南海」に
誰一人並んでいない。

へえ~っ、こんなこともあるんだネ。
もう一つの行列店「ラーメン二郎」は
悪天候にもかかわらず、およそ30人。
これは利用者の年齢層の成せる業で
「二郎」は若者主体だが
「南海」はオッサンやジイサン少なからず。
身体の冷え方がまったく違うからネ。

けっこうなボリュームの「南海」だから
J.C.には無用の長物、無視し続けてきた。
けれど、死ぬ前にもう一度食べてみなヨ。
天の声が聞こえたのだ。
その一方で、おいおいムリムリやめときなヨ。
地の声もささやいた。
ほうら、村田英雄まで歌い出したぜ。

♪  無理はよそうぜ 体に悪い
  洒落たつもりの 泣き笑い
  どうせこの世は そんなとこ
  そうじゃないかえ 皆の衆 ♪
   (作詞:関沢新一)

「皆の衆」は前回の東京五輪が開催された、
1964年のリリース。
三波春夫の「東京五輪音頭」の向こうを張って
大ヒットを記録した。

さて、「キッチン南海」。
ムッチーの諌言に耳を貸しかかったが
こんなケースは二度とない。
ちょいとばかり気が早いけど、
冥土のみやげに入店の巻である。

店先を何度も行き過ぎてるから
メニューは頭に入っている。
唯一気になっていた、
ひらめフライ&しょうが焼きの盛り合わせを即注。
半ライスの指定も忘れずにネ。
それでも定食屋の並盛り、
気取った洋食屋の2倍はあった。

メインプレートがまたスゴいのなんのっ! 
繊キャベがマッターホルンか、
アコンカグアの如くにそそり立つ。
てっぺんにはキリマンジャロの雪よろしく、
貝割れが降り積もっていた。

ケチャスパはマヨ入りの冷製。
デカいひらめは四つ切り。
玉ねぎたっぷりのしょうが焼きもこんもり。
食っただヨ、ギャル曽根みたいに食っただヨ。

結果、その日は固形物がノドを通らなかった。
盟友・麦酒だけが疲れた胃袋を
いたわってくれたのでした。

「キッチン南海 神保町店」
 東京都千代田区神保町1-39-8
 03-3219-1616

2024年2月8日木曜日

第3467話 みんな歓ぶ 町屋の「山三」

のみとも・O橋サンと半年ぶりの酌交。
舞台は先月4人会を開いた町屋の「山三」だ。
刺身と中華の二刀流が冴えわたり、
誰を連れて来ても一様に絶賛の嵐。
いい店である。

黒ラベルの中ジョッキをガチンと合わせ、
初っ端に通した赤貝セットに箸を付けた。
赤貝の刺身4切れにひもきゅう巻が1本。
深飲みのスタートには絶好の一品である。

店を指定したら、相方はネット検索していて
名物の釣りアジフライを即注に及んだ。
内房の黄金アジはフワッフワ。
満面の笑みでかぶりついている。
J.C.が追加したカキフライは
アジほどではないにせよ、これもまた美味。

あまりお目に掛からない生ホッピーに切り替えた。
なんだかサラッとし過ぎてあまりパッとしないなァ。
中ジョッキ1杯にとどめ、キンミヤのボトルに移行。
黒ホッピーの瓶もお願いしておく。

いやァ、よく飲む人だO橋選手。
焼酎の注ぎ方が半端じゃないぜ。
そいつを生ビールみたいに
ガブガブいくもんだからついツラれる。
この御仁と飲むときはいつもこうなるんだ。

そうしてJ.C.のイチ推しレバニラ炒めを通した。
普段、ニラレバと呼んでいるが
メニューにレバニラと明記されているので
郷に従った次第なりけり。

その後も何か食べた記憶があるが
酔っ払っちまって覚えちゃいない。
気がつけばキンミヤ600ccが2本空いており、
その後も沢の鶴だったかな? 
熱燗に手を出した。

15時スタートであったが予約の際に
「3時間でお願いします」と釘を刺されており、
17時半にはお開きにした。
誰を連れてってもみんな歓ぶ「山三」である。

どこか歌の歌えるところか、
ホステスさんのいる店に行きたいってんで
谷中よみせ通りの行きつけ「G」へ。

ここで先日、京成本線・江戸川駅で
バッタリ会ったA美チャンに再会。
客が少ないもんだから
歌の順番がすぐ回って来ちゃう。
「酔っ払い、ヨッパライ!」と
からかわれながらも頑張ったのでした。
やれやれ。

「山三(やまさん)」
 東京都荒川区町屋2-4-10
 050-5571-7522

2024年2月7日水曜日

第3466話 朝子サンが愛したニラソバ

メトロ千代田線・根津駅のそばに
「BIKA」という中国料理店がある。
町中華ではなく、本格中華の部類に入る。
値付けもかなりお高い。
文京区・根津が最寄りながら地番は台東区・池之端。
J.C.行きつけの日本そば屋と洋食屋に同じくである。

「料理の鉄人」の審査員長をつとめた岸朝子サン。
彼女が「BIKA」をひいきにした。
それを知ったのはわりと最近。
とりわけニラソバを愛したという。
何度か利用しているがニラソバは未食。
出向いてみた。

黒ラベル生のグラスとともに通した。
12時半なのに先客は一人。
空いてるせいか3分で着卓した。
ふ~ん、なかなかの景観である。

細かく切り揃えたニラがどんぶりの一面に。
てっちりのポン酢に浮かぶ鴨頭ねぎに似ている。
中央には挽き肉主体の餡が鎮座ましましている。
中華風ボロネーゼだネ、コレはー。
アッサリした醤油スープに極細ストレート麺。
日本のにゅうめんみたいな味わいである。

ニラソバに思い出あり。
あれは半世紀以上も以前、新橋の雀荘だった。
学生時代のバイト先は芝のシティホテル。
仕事帰りにポン友と4人でタクシーに乗り込み、
「新橋の第一京浜ガード下までお願いします」
ほとんど決まり文句だった若き日々。

雀荘「楽々」は倒れそうなビルの2階にあり、
1階には当時としては珍しいアチラ系中華。
店名は忘れたけれど、名物がニラソバで
われわれは来るたびにすすっていた。
出来上がると中国人のアンちゃんが
「ニラソバ~!」ー叫びながら上がって来る。

思い出されるのはもう一つ。
勤務先はプリンスホテルのフラッグシップ、
東京プリンスだが此処は当世話題の裏金作り。
いわゆる政治資金パーティー発祥の地である。
半世紀以上も前からネ。
「〇〇君を励ます会」と銘打ったパーティーは
実質「〇〇君を太らす会」だったのだ。

それはそれとして「BIKA」のニラソバ。
そこそこ美味しいものの、
裏金の無い身に1430円は高いなァ。
土地柄を考慮しても適正価格は
900円じゃないでしょうかー。

「BIKA」
 東京都台東区池之端4-25-11
 03-3821-3347

2024年2月6日火曜日

第3465話 創業明治45年の町中華

最近、足繫く通う神保町シアター。
この日も小津安二郎を観に赴いた。
切符は当日売りのみだからまず購入し、
それから食事ということになる。
以前は毎週出入りしたエリアながら
ここ数年は足が遠のいていた。
それが映画のおかげで再びなじみの町となった。

ちょくちょく利用するのが「萬楽飯店」。
千代田通りの向こう側で地番は神田小川町。
前回、ラーメンでビールを飲んだから
今回は当店の一番人気、チャーハンに初挑戦。
ラーメンはほとんど注文が入らないが
チャーハンは客の半数がオーダーする。
そんなに旨いんかい?

店内には入れたものの、中で5人待ち。
10分待ってカウンターに座れた。
なぜかビールが飲みたくなくて(ビョーキかな?)
チャーハンだけ通す。
後客もその次もみなチャーハンと来たもんだ。

てっぺんに紅生姜をチョコンと乗せて登場。
ヤケに湿っぽいルックスである。
ちり蓮華で一匙口元に運ぶ。
ん? これは好みじゃないな。

シットリというよりネッチョリ。
J.C.はパラパラ系が好きなんだ
具はチャーシュー・玉子・長ねぎ。
過不足なく、そこはいいんだがネ。
清湯も化調がやや強く、好きになれなかった。

もともと明治45年に日本橋で創業し、
いつこちらに移転したのか存ぜぬが
現在四代目になるとのこと。
此処から400mほど北、
神田川に架かる昌平橋のたもとに
「味の萬楽」なる、やはり町中華があり、
20年以上前に一度だけ利用した。
あちらは当店主の実姉が営むそうだ。
そう聞くと、何だか懐かしくなってしまい、
今度行ってみようという気になった。

「萬楽飯店」の向かいに小さなビルがあり、
袖看板に神田中華料理組合の文字。
眺めていたら人の出入りが相当激しい。
それも中華料理屋の経営者らしからぬ、
サラリーマン風ばかり。

興味をそそられ、ビルの前まで行ってみたら
何のこたあない公衆喫煙所で
中華料理組合が管理していた。
みんな会社を抜け出して吸いに来るが
喫煙者ってまだまだ多いんですなァ。

「萬楽飯店」
 東京都千代田区神田小川町3-5-1
 03-3291-2552

2024年2月5日月曜日

第3464話 6年ぶりだぜ「三州屋」

本日も映画のあとで、めったに来ない六本木に。
まだ宵の口で店があまり開いていない中、
ミッドタウンそばの「三州屋」に入店。
J.C.みたいな呑み助にとって
通し営業はありがたい、感謝すべし。

銀座の「三州屋」は定期的に利用するが
六本木店は実に6年ぶり。
前回はW杯ロシア大会の真っ最中だった。

見覚えのある女将サンに黒ラベル大瓶をお願い。
サービスの突き出しはブリのアラの炒り煮と
針生姜をあしらった大根浅漬け。
こういうのもまたありがたい。 
♪ ありがたや ありがたや ♪
守屋浩が歌い出したが
浪花の小姑がうるさいので長くは歌わせない。

肉豆腐を通すと女将が
「よかったら玉子どうぞ」
卓上のどんぶりに数個の生玉子。
お昼に定食を食べる客へのサービスだろう。
でも、生玉の存在は単なる肉豆腐をすき焼きに
グレードアップしてくれ、これまたありがたい。

白鶴の熱燗に切り替える。
何かつまみをもう1品と壁の品書きとにらめっこ。
うなぎの蒲焼きに目が止まった。
しばらく食べてないな。

うなぎ屋以外でうなぎは経験がないが
「三州屋」は何を注文してもまず外さない。
よおし、いってみようじゃないかー。
はたして・・・。
良質な粉山椒のアシストもあって想像以上だ。
支払いは千円札3枚にコインのオツリが何個かきた。

六本木から都営大江戸線に乗る。
門仲か森下でもう1軒の腹積もり。
電車に揺られながら心当たりに思いを巡らせる。
そうだ、森下の「とり満」にしよう。

当店は2年余り以前、のみとも・B千チャンと訪れ、
期待以上の焼き鳥群に舌鼓を打った覚えがある。
まだ18時前で先客ゼロ、カウンターの中央に着いた。

ドライの大瓶にサービスの突き出しは枝豆。
「三州屋」も「とり満」も
しっかりしたつまみがフリー・オブ・チャージ。
愚にもつかぬお通しに500円もボッタくる、
チェーン居酒屋には猛省を促したい。

砂肝&ハツは塩、子みち&ねぎまにタレ。
子みちというのは牝鶏の玉子の通り道。
だけどもコイツが硬くてスカスカ。
他店のちょうちんに及ぶべくもない。

ちょいと不満が残り、2軒目ということもあって
早々に引き揚げたのでした。

「三州屋 六本木店」
 東京都港区六本木4-4-6
 03-3478-3796

「とり満」
 東京都江東区森下1-10-7
 03-3634-0141

2024年2月2日金曜日

第3463話 この空間に夜まで居たい (その2)

尾山台の「オー・ボン・ヴュー・タン」。
卓上のリストをおもむろに取った。
えっ、ええ~っ! こいつは驚いた。
ピノー・デ・シャラントがあるじゃないかー。

日本人でこの酒を知っている方はあまりいまい。
かく書くJ.C.も長いことお目にかかっていない。
最後に飲んだのはいつだっけ?
今世紀でないことは確かだ。
パリかなァ? いや、NY だったかもしれない。

ワインが未成熟なうちにコニャックを足し、
発酵を止めて甘味を残す手法を用いる、
酒精強化ワインである。
アルコール度数は17度が一般的で
欧州だと赤やロゼも流通するが
日本ではほとんど白になる。

クイッ! 懐かしい味が舌に拡がった。
色合いは白とロゼの中間、
いわゆるオレンジワインに近い。
グラスに顔を近づけたらアルコール分が
揮発するのか、目にしみるものがあった。

すぐに飲み干し、もう1杯いこう。
いや、こういうものはガブガブ飲むものではない。
カテゴリーはデザートワインだからネ。
再びリストに見入った。

せっかくこの空間に身を置いているのだ。
今日は、アラ・フランセーズでまいろう。
ペルノーをいってみようじゃないかー。
ちょいと待てヨ、オニイ(オジイ)さん。
リコリス(甘草)を加えたリカールがいいな。

それらはアニス香る酒、パスティス。
”偽物” や ”もどき” を意味する、
パスティーシュ由来の言葉で
製造禁止になったアブサンの代替品として生まれ、
パイやパスタも語源を同じくするらしい。

水割りを所望すると、
クラッシュド・アイス入りの水差しが運ばれた。
オー! これこそ「オー・ボン」の魅力だ。
こんな供し方は銀座のバーでもしやしない。
しかも酒の値段は銀座の3分の1と来たもんだ。

尾山台にプチ・パリがあった。
この空間に夜まで残ってグラスを傾けたい。
もっとも夕方には閉店しちゃうんだけどネ。
それでも
Je suis heureux(わたしはシアワセ)でした。

なんだかビールが飲みたくなり、
前回同様、牛めし屋に立ち寄り、
中瓶を空けて帰宅の途に着いたのでした。

「オー・ボン・ヴュー・タン」
 東京都世田谷区等々力2-1-3
 03-3703-8428

2024年2月1日木曜日

第3462話 この空間に夜まで居たい (その1)

東急目黒線を多摩川駅で乗り換えて
下丸子辺りに行こうとも思ったが
それでは大田区に戻ることになるし、
下丸子の隣りの武蔵新田では
去年の夏の終わりに飲んだ。

そうだ、あのときは大岡山から乗った電車が
てっきり目黒線かと思いきや、大井町線の間違い。
それでもいいや、ええいままよと、
尾山台の「オー・ボン・ヴュー・タン」に
来てみたらあいにくの定休日。
J.C.御用達の牛めし屋にシケ込んで中瓶を飲み、
あらためて武蔵新田に向かったのだった。

よお~し、夏の仇を冬に取ったろうやないかい。
尾山台駅前のハッピーロード商店街、
そのなだらかな坂を上って行った。
ん? ちょっと待てヨ、ハッピーロードといったら
東武東上線は大山駅前のアーケードじゃないかー。

かたや板橋区の庶民の町。
こなた世田谷区のハイソな町。
雰囲気がガラリと変わって
まっ、こういうのも東京らしくていいかもネ。

この日、「オー・ボン」は営業していました。
しかもいつもは立て込んでいるのに
今日の客は少なく穏やかな空気が流れている。
奥のカフェでさっそく1杯といきたいところながら
フレンチ総菜が売切れちまっては元も子もない。

まずはショウ・ウインドウの品定め。
おっと、好物のピエ・ド・コション(仔豚の足)は
最後の1個と来たもんだ。
言わんこっちゃないねェ。

買い求めたのはその豚足のガレット仕立てに
ニョッキ・パリゴーとタブレ(クスクスのサラダ)。
そして、ステーク・デ・シーヌ・ド・ポール。
パリゴーはニョッキを詰めたシュー生地に
フロマージュとベシャメルがテンコ盛り。
オーヴンで焼き温めて食べる。
長ったらしい名前は豚肩ロースの生肉だ。
こちらはガーリック・ステーキにする。

こんなに仕入れりゃ今宵は万全。
てェことは夜の外飲みはナシ。
カフェで軽く飲ったらゴー・ホーム一直線だネ。
グラスを傾けている間、
ご馳走たちは冷蔵保存しておいてもらう。

おや、コロ助の後からかな?
カウンターは使われなくなった様子。
席はみなテーブルになっている。
窓際の2人掛け、窓に背を向けて腰掛けた。

ランチは窓の彼方に洗足池が見えたが
今は環八通りの殺風景な景色。
繊細な神経の持ち主はケース・バイ・ケース。
窓を向いたり、背を向けたり、
ちゃあんと使い分けていますってー。

=つづく=