2024年2月1日木曜日

第3462話 この空間に夜まで居たい (その1)

東急目黒線を多摩川駅で乗り換えて
下丸子辺りに行こうとも思ったが
それでは大田区に戻ることになるし、
下丸子の隣りの武蔵新田では
去年の夏の終わりに飲んだ。

そうだ、あのときは大岡山から乗った電車が
てっきり目黒線かと思いきや、大井町線の間違い。
それでもいいや、ええいままよと、
尾山台の「オー・ボン・ヴュー・タン」に
来てみたらあいにくの定休日。
J.C.御用達の牛めし屋にシケ込んで中瓶を飲み、
あらためて武蔵新田に向かったのだった。

よお~し、夏の仇を冬に取ったろうやないかい。
尾山台駅前のハッピーロード商店街、
そのなだらかな坂を上って行った。
ん? ちょっと待てヨ、ハッピーロードといったら
東武東上線は大山駅前のアーケードじゃないかー。

かたや板橋区の庶民の町。
こなた世田谷区のハイソな町。
雰囲気がガラリと変わって
まっ、こういうのも東京らしくていいかもネ。

この日、「オー・ボン」は営業していました。
しかもいつもは立て込んでいるのに
今日の客は少なく穏やかな空気が流れている。
奥のカフェでさっそく1杯といきたいところながら
フレンチ総菜が売切れちまっては元も子もない。

まずはショウ・ウインドウの品定め。
おっと、好物のピエ・ド・コション(仔豚の足)は
最後の1個と来たもんだ。
言わんこっちゃないねェ。

買い求めたのはその豚足のガレット仕立てに
ニョッキ・パリゴーとタブレ(クスクスのサラダ)。
そして、ステーク・デ・シーヌ・ド・ポール。
パリゴーはニョッキを詰めたシュー生地に
フロマージュとベシャメルがテンコ盛り。
オーヴンで焼き温めて食べる。
長ったらしい名前は豚肩ロースの生肉だ。
こちらはガーリック・ステーキにする。

こんなに仕入れりゃ今宵は万全。
てェことは夜の外飲みはナシ。
カフェで軽く飲ったらゴー・ホーム一直線だネ。
グラスを傾けている間、
ご馳走たちは冷蔵保存しておいてもらう。

おや、コロ助の後からかな?
カウンターは使われなくなった様子。
席はみなテーブルになっている。
窓際の2人掛け、窓に背を向けて腰掛けた。

ランチは窓の彼方に洗足池が見えたが
今は環八通りの殺風景な景色。
繊細な神経の持ち主はケース・バイ・ケース。
窓を向いたり、背を向けたり、
ちゃあんと使い分けていますってー。

=つづく=