2017年7月26日水曜日

第1674話 上野発の私鉄電車 (その1)

  ♪   上野発の夜行列車 おりた時から
     青森駅は雪の中
     北へ帰る人の群れは 誰も無口で
     海鳴りだけをきいている
     私もひとり 連絡船に乗り
     こごえそうな鴎見つめ 泣いていました
     ああ津軽海峡・冬景色        ♪
            (作詞:阿久悠)

石川さゆりの初めての大ヒット曲、
「津軽海峡・冬景色」は1977年元日の発売。
歌詞からして夏に売り出される曲ではないわな。
前年の「北の宿から」(都はるみ)に続き、
日本列島には”北”に焦点を当てた歌謡曲が流れていた。

猛暑日となったその日、J.C.は上野駅にいた。
駅といっても「あゝ上野駅」の舞台となった、
JRの大ステンションではなく、
不忍口からちょいとばかり歩く、京成電鉄の上野駅である。
駅の真上には西郷さんがはるか遠く、
ふるさと薩摩の方向を見据えている。

  ♪   上野発の私鉄電車 おりた時から
     高砂駅は炎天下
     家へ帰る人の群れは 誰も無口で
     改札口を抜けてゆく
     私もひとり 額の汗を拭き
     うだるような暑さの中 歩いていました
     ああ柴又街道・夏景色       ♪

てなこって京成高砂で下車。
向かったのは寅さんのふるさと葛飾・柴又であった。

白状すると上記の替え歌には嘘があって
実際に高砂から歩いてきたのは
ほぼ京成金町線の線路に並行している近道で
通りに名前があるのかないのかも存ぜぬ道である。

実際の柴又街道はJR金町駅南口から南下して
江戸川区・篠崎町で京葉道路ぶつかる大通りだ。
街道を来るとだいぶ遠回りになってしまい、
おまけに見る物とてないから炎天下ではキツい。

柴又には一つの目的があった。
いえ、参道を抜けて帝釈天に詣でるためではない。
柴又駅前にある1軒の居酒屋を訪ねるためだった。

その日の明け方に見た夢に柴又の町が出てきた。
隣りを歩いているのは昔別れたGFである。
そして二人が入店したのはくだんの居酒屋だったのだ。

=つづく=