2022年9月27日火曜日

第3111話 満開のマリア・カラス (その2)

1958年12月19日夜。
絶頂期のディーヴァ(歌姫)を
あますことなくとらえた、
貴重な映像をあらためて楽しむ。

大きなスクリーンで観ると、
ひと味もふた味も変わってくるものだ。
彼女の存在感に圧倒された。

第17代仏大統領、ルネ・コティをはじめ、
列席するスターの顔ぶれも破格。
ジュリエット・グレコ、ブリジット・バルドー、
ジェラール・フィリップ、イブ・モンタン、
チャーリー・チャップリン、
かくもカラスは愛されたのだ。

ちなみにこのひと月後、
ルネ・コティの後を継いだ第18代大統領が
シャルル・ド・ゴールである。

ガラ・コンサートは2部構成。
1部はアリアが中心。
十八番の「ノルマ」(ベッリーニ)から
「清らかな女神よ(カスタ・ディーヴァ)」。
「イル・トロヴァトーレ」(ヴェルディ)からは
「恋はばら色の翼に乗って」。
「セビリアの理髪師」(ロッシーニ)の「今の歌声は」。

2部は一転して
オペラ「トスカ」(プッチーニ)第2幕の実演。
舞台は1800年、侵攻したナポレオンが
共和派に勝利をもたらせた、その夜。

ローマの悪徳警視総監・スカルピアの執務室は
ファルネーゼ宮殿内という設定だ。
ちなみにこの宮殿は1874年以来ずっと
フランス大使館として使われている。

カラスの歌唱もさることながら
スカルピア役のバリトン、
ティト・ゴッビがすばらしい。
何か細工でもしたんじゃないかと疑いたくなる、
巨大な鷲っ鼻が悪役にドンピシャリ。

その容姿からでもなかろうが
「リゴレット」(ヴェルディ)の
タイトルロールを当たり役ともした。
リゴレットは姿奇怪なせむしの役どころだからネ。

終映は16時。
相方は感動に打ちのめされている。
これではこのまま帰すわけにはいきません。