その日、京成本線を降りたのは葛飾区・青砥駅。
本線と押上線の分岐点だ。
昼めしどきに2軒回るつもりで
まずは狙いのたこ焼き屋で軽く飲り、
次はどこへと決めていない。
たこの引き戸を引いたら
イートイン・コーナーがブロックされている。
「ごめんなさ~い! 今はテイクアウトだけで
イートインはご予約なんです」ー
ワン・オペの若い店主が、ちと申し訳なさそう。
少々気落ちして町なかを物色するも
周りにこれといった店がない。
駅の東側に日本そば「更科ゆたか」が
あることを思い出し、ガードをくぐり、
続いて暖簾をくぐった。
時刻は13時半、客入りは6割。
オバちゃんに中瓶をお願いし、
品書きを手に取ったものの、
目が釘付けになったのは壁のポスターだった。
熊本産の馬刺しが色鮮やか。
馬刺しの本場・熊本から
捌きたてを取り寄せました
ふぐ刺しのように薄切りが円形に盛り付けられ、
深紅のバラの花びらのよう。
ここでヴィレッジ・シンガーズのヴォーカル、
清水道夫が歌い出す。
♪ バラ色の雲と 思い出をだいて
僕は行きたい 君の故郷へ
野菊をかざった 小舟のかげで
口づけ交わした 海辺の町へ ♪
(作詞:橋本淳)
敬愛する作曲家・筒美京平との出会いとなった、
「バラ色の雲と」は1967年8月のリリース。
その頃、J.C.、
福島大学経済学部のグラウンドにおける、
サッカー部の合宿でOBたちに
地獄のシゴキを受けていた。
もう二度とイヤだ、アレはー。
も一度やられたら、死んでしまうかもしれない。
それはそれとして日本そば「ゆたか」。
馬刺し好きは即注していた。
ところが一人前1400円の赤身は
ポスターと似ても似つかない。
ニンニク&生姜、粗塩&たまり醤油が添えられた。
卓上の生醤油も試してみたけれど、
一番合ったのはニンニクとたまり醤油だ。
このところ、たびたび馬刺しを食べてるが外れ多し。
それでも今回は外れとは言えない。
バラ色の雲が鉛色の雲に変わっただけでした。
「更科ゆたか」
東京都葛飾区青戸1-10-3
03-3697-1519