とある夜、とある場末のスナックでの出来事。
入口周りが小ジャレており、
置かれたビールラックも愛飲銘柄とあって
何も確かめず、衝動的にドアノブを引いたのだ。
カウンターの内側にオネバのママ。
外には客だろうか、ホステスだろうか、
はたまたサクラだろうか、オネエが一人。
オネエといってもLGBTQには属さぬ、”純娘”だ。
中瓶をお替りしたとき、
ママがオネエにささやいた。
「Mきチャン、そろそろ歌ったら」
Mきチャン、こちらを振り向いて
「お客さんは?」
「いや、ボクはいいヨ」
ちとあわてたネ。
そうして彼女が歌い出したのは
西島三重子の「池上線」。
この春、池上に出かけた際も
紹介したが、あえてその2番をもう一度。
♪ 終電時刻を確かめて
あなたは私と駅を出た
角のフルーツショップだけが
灯りともす夜更けに
商店街を通り抜け
踏切り渡ったときだわね
待っていますとつぶやいたら
突然抱いてくれたわ
あとからあとから 涙あふれて
後ろ姿さえ 見えなかったの
池上線が走る町に あなたは二度と来ないのね
池上線に揺られながら 今日も帰る私なの ♪
(作詞:佐藤順英)
浪花の小姑にまたドヤされそうだが、しゃんめえ。
この再紹介には理由があるのだ。
Mきちゃんの歌唱もさることながら
J.C.が激しく反応したのは彼女の歌声ではなく、
歌詞の流れる画面、ダンボの耳の代わりに目が釘付け。
いつ頃の撮影だか判らんけど、
本人映像が歩くのは池上駅前通りではなかった。
2駅隣りの久が原駅前、末広商店会だったのだ。
春に紹介したとき、
歌詞の舞台は池上線のタイトルロール、
池上駅に相違ないと断定したからネ。
自信は揺らぎ、心が騒いだ。
それから眠れぬ夜が続いている。
ちょいとオーバーながら、ものの弾みです。
=つづく=