そして翌々日、映画は13時半スタート。
同じ轍は踏むまい。
ボーっと昼めしなんか食っていられない。
ユーロスペースに直行した。
この日観たのは井田探(もとむ)監督による、
日活映画「青春を返せ」。
死刑映画週間全7本中、2本目である。
無実の罪で死刑を宣告された兄(長門裕之)を
救うため、妹(芦川いづみ)が奔走する。
いつも可憐な役柄に終始するいづみチャンが
八面六臂の活躍を見せる異色作で
興味深いのは真犯人と思しき男が藤竜也。
思うにこの共演がキッカケで
二人は結ばれたのではなかろうかー。
長門の母親役は高田由美。
前途を悲観して自死してしまう。
死刑判決をくつがえすための弁護士が清水将夫。
実生活で二人は夫婦である。
J.C.は高田をほとんど知らないが
清水には強烈な印象を受けている。
小学校1年か2年のときに観た、
裕次郎主演の「錆びたナイフ」のラストシーンは
悪の黒幕の清水を倒すため、
裕次郎がジャックナイフを握るのだ。
ほかには三原綱木と所帯を持った田代みどり。
NHKのドラマ「事件記者」で
茶の間の記憶に残る大森義夫。
芦田伸介、大滝秀治も重要な役柄で
脇をしっかりと固めている。
忘れられないのは音楽を担当した山本丈晴。
作曲家にしてギタリストの彼は
古賀政男に指示し、古賀の養子になる。
のちに当時の日本を代表する女優・山本富士子と
結婚して今度は婿養子、山本姓を名乗った。
全編に流れる音楽が強く心に響く。
初めて彼の作品にまともに触れたが
そこは蛙の子は蛙、
古賀メロディーに通ずるものがあった。
使われる弦楽器はいったい何だろう?
大正琴と思われるがスチールギターかな?
ひょっとしたら山本が考案して作り上げた、
琵琶ギターというヤツかもしれない。
実際に聞いたことがないので判らないけどネ。
今一つ主役を張り切れなかった芦川だけに
この映画は代表作と呼べるだろう。
結婚と同時に引退した、
いづみ婆ちゃんも今年で89歳。
浅丘ルリ子の5歳上、吉永小百合の10歳上だ。
6歳下の夫、藤竜也は今も毎晩、
寝るときに妻の手を握るという。
なかなかいいとこある旦那じゃん。