2025年5月30日金曜日

第3808話 トリュフとウニの生パスタ

去年の暮れに出掛けたが
予約でいっぱいとあって
入店を拒否(?)されたイタリアン。
渋谷は並木橋の「イル・フューメ」に
再チャレンジするため、出直した。
フューメはイタリア語の fiume。
川のことである。

界隈の人気店につき、
12時を過ぎるとヒドく立て混む。
よっていつもより早仕掛け、
11時半過ぎには到着した。

カウンターの右端に案内される。
メニューはいろいろと煩雑なので省く。
生パスタのスパゲッティ、
黒トリュフとウニのクリームソースを
発注に及んだ。

ビールは生のカールスバーグ。
大好きな銘柄につき、
一も二もなくお願いすると
泡少なめで提供され、
うん、この店のスタッフは
よ~く判ってるじゃないかー。
率直にエラい!

最初にサーヴされたのはサラダ。
ロメインとサニーの2種類レタスが満載。
そこになぜかクロワッサンが1個。
ん? イタめしでクロちゃんかえ?

でもネ、かじってみて驚いた。
これはウマい!
特有のフレーキーなサクサク感は
まったくなく、むしろシットリ。
新たな方向性をしっかり見出している。
自ずと期待は高まった。

遅からず主役が登場。
ウニの姿は見えなくとも
黒トリュフがたっぷり。
ヒタヒタのソースに溶け込んだウニが
「アタシもちゃんと参加してるわヨ」
色っぽくささやきかけてくる。

ソースの塩気が強いけど
美味しくいただいた。
正午を過ぎて店内はいっぱい。
生を2杯と明記しなかったが
一口オードヴルを含め、会計は3460円。

すぐ近くの金王八幡に手を合わせる。
旧渋谷城があった場所で
渋谷の地名は此処が由来となりました。

「イル・フューメ」
 東京都渋谷区渋谷3-14-2
 03-6434-1072

2025年5月29日木曜日

第3807話 ニューそばともと 戻った松戸

先日、墓参の帰りに立ち寄った、
松戸市・上本郷の町中華「大八北珍」。
開店前にゆかりの町を散策していて
たまたま見つけたのが
「ひなり」という名の日本そば屋。
ゆかりで「ひなり」かァ。
どうにも気になって舞い戻った。

本日の相方は最近、
とある飲み屋で知り合ったMきサン。
無類のそば好きとあって話が合った。
それでは今度一緒にそばをとなり、
本日が初デートだ。
よって彼女はめしともならぬ、
そばともという位置に落ち着いた。

いきなり松戸の先まで連れて来られて
気の毒な気もしたが
まあ、いいでしょう。

ドライ中瓶を注ぎ合って乾杯。
酒を飲む客へのサービス品として
うずら玉子醤油漬けが
たったの100円だったかな?
1皿に3個付けである。
早くて安くて少ないのがありがたい。

続いての鴨焼きは白ねぎ付き。
そして天盛りは
海老・いか・茄子・かぼちゃ・大葉。
それぞれ水準に達している。

相方は日本酒が苦手とあって
ひたすらビールを飲み続ける。
そろそろ締めのそばにしようかー。
カラフルなイラストの品書きを
繰っていて二人の手が留まったのが
味くらべせいろ(1430円)。
こうあった。

数量限定 大盛りです
二・八そば
 通常のせいろで
 召し上がって頂いているそば
あらびきそば
 殻ごと挽いた粉で打つ風味豊かなそば
かつおだしのつゆ・くるみづゆ

互いの目と目が合って決定。
ただし、たくさんは食べられない J.C.、
1人前取ってそれぞれ少しづつ、
おすそ分けにあやかることにした。

「江戸川を渡った甲斐があったわ!」ー
この一言に救われて
さァ、これから松戸か金町辺りで
飲み直しとまいりましょう。

「手打ちそば ひなり」
 千葉県松戸市仲井町3-25
 090-7173-4175

2025年5月28日水曜日

第3806話 映画のあとのお好み焼き鳥 (その2)

千代田区・神田神保町の「とり瑛」。
おすすめの品書きには
焼き鳥以外の数々が並んでいた。

真アジ刺身・どんこ椎茸炭火焼き・
新玉葱とシラスのサラダ・蛤の酒蒸し・
鶏皮ポン酢・鶏胸肉の炙り叩き・
鰹の酒盗とクリームチーズ・
特大ホワイトアスパラ
 炭火焼き or 天麩羅

いきなり焼き鳥でもないもんだから
何かいっとかなきゃネ。
初っ端に載ってた真アジ刺身を。
オニイさん曰く、
「下の野菜が薬味になってますんでー」

なるほどアジの下には
葱・茗荷・生姜がみんな白髪状。
そのまた下に大葉が1枚。
千葉産の真アジはとても新鮮だ。

ドライのお替わりとともに
焼き始めてもらう。
最初にはらみとおびを塩でー。

はらみは横隔膜。
噛んだときのクニュクニュ感が好き。
おびというのはももの内側の中心に
ポコンとあるジューシーな希少部位。
1羽から2つしか取れない。
オイスターとも呼ばれている。

続いてどちらも大好物、背肝(腎臓)と
はつ元(はつ&レバーの間)をタレでー。
稀少度の違いだろうか、
背肝ははつ元の半分程度しかない。
ここで信州の清酒、川中島の冷たいのを。

また塩に戻してはつ(心臓)と
アキレス(ももの最下部)。
プリプリとしたはつの嚙み心地が
歯に快感を呼ぶ。
アキレスはももよりずっと柔らかい。

焼き鳥をたかだか6本で切り上げた。
もうちょっといけないこともないが
品書きに山わさび小飯があって
このための切り上げなのだ。

わさびに異常なこだわりを持つ、
わが家の冷蔵庫に生の本わさびと
小分けパックの山わさびが
切れることはまずない。

盛られたごはんに
卵黄の醤油漬けがポトンと一つ。
上から削り散らされた生山わさび。
夜に白飯はあまり食べないけれど
ゆっくり味わってのお勘定は
5410円でありました。
どうもごちそうさま。

「とり瑛」
 東京都千代田区神田神保町1-4
 03-5244-5947

2025年5月27日火曜日

第3805話 映画のあとのお好み焼き鳥 (その1)

この日は映画を2本観る。
2本のインターバルに
界隈をプラプラしていて出逢ったのは
間口の狭い焼き鳥屋「とり瑛」。
ガラス戸に鳥の各部位が貼り出されていた。

おっ、背肝があるゾ。
はつ元・おび・アキレス・ちょうちんも。
よし、映画がハネたらここで晩酌と参ろう。
中をのぞくとスタッフが賄いの最中。
ジャマして悪いが引き戸を引いた。

懸念したのはビールの銘柄と
焼き鳥のお好み対応だ。
コース限定だと最後まで食べ切れない。
すると接客の女性曰く、
ビールはスーパードライ、お好みもOK。
即刻、18時半の予約を入れた。

その際に
「田園調布の『鳥鍈』さんとの関係は?」
「ときどき間違えられるんですけど
 まったく関係ありません」
「店名は同じでも ”えい” の字が
 ビミョーに違いますもんネ」
「そうです、そうです」

田園調布駅前の「鳥鍈」は
かつて長嶋茂雄御用達。
20年前に1度だけおジャマしたものの、
ミスターには悪いが
まったく感心しなかった。

本日の2本目。
横溝正史原作、市川崑監督による、
「獄門島」を見終え、向かった。
徒歩3分の距離である。
すぐ隣りにあったパチンコ店、
「人生劇場」がいつの間にやら
古本屋になっている。

名前はそのまま「Jinsei Gekijo」と
残っており、かなりモダンな大箱が
「とり瑛」を挟むように2店舗も。
チラッとのぞいて心配になった。
客が誰一人居ないんだ。
この状態が続いたら
店の Jinsei は余命いくばくもない。

それはそれとして「とり瑛」。
1階はカウンターのみだが
2階には広いスペースがあるようだ。
カウンターの一番奥に着く。

プリントアウトされた、
本日のおすすめを眺めながら
中瓶を通すと突き出しはフキの煮浸し。
おすすめの紹介は次話のお楽しみです。

=つづく=

2025年5月26日月曜日

第3804話 映画の前の下足箱

今は昔、神保町の一画に
出雲そば専門店があった。
いつの間にか無くなって
跡地に中華料理店ができた。

この日も映画の前に初入店。
木の階段をトントン昇ると
銭湯の下足箱に出迎えられた。
奥からオジさん出て来て
「面倒ですけどお願いします」
「ハイ、ハイ」

靴を下足箱に放り込み、
さらに3階へ上がった。
ふ~ん、珍しいネ、個室が主体だ。
2人用の小さな部屋で
サッポロ黒ラベル中瓶を通し、
メニューを開いた。

=お得な日替わりランチセット=
A レバニラ炒め ¥950
B 牛肉レタス炒飯 ¥980
C 味噌ラーメン+麻婆豆腐小丼 ¥1000

ふ~む、ここから択ぶとするかー。
Cを通すと味噌ラーメンは麺の上に
豚挽き・モヤシ・コーン。
周りにニラが散っていた。
食べ進み、う~ん、好みと違うなァ。

小丼も相当に緩い。
麻婆豆腐にパンチが足りない。
食欲が無いせいもあって
ずいぶん残してしまった。

会計時、先刻のオジさんと言葉を交わす。
出雲そばは20年ほど前に閉業。
跡をビルのオーナーが継いで
豆腐料理屋を始めたものの、
これも1年ほどで頓挫したらしい。
当店は2007年の開店だという。

ふと思った。
失敗したのは安易に日替わりから
選択したからではないのか?
自分がこれぞと思うものを
注文しなかったためではないのか?

翌週、また映画の前に再訪。
まずは靴を下足箱へ。
チラリ見た日替わりランチは
3種類とも前週のまんま。
あまりヤル気が感じられない。

10種類以上の定食から
白羽の矢を立てたのは
フレッシュトマトのむき海老チリソース。
5尾の小海老に玉子が2個分ほど。
そこにトマトの串切りが6個も。

何だかなァ・・・この日も食欲が湧かない。
主菜もコーンスープも大根サラダも
半部以上残すことになってしまった。
白飯にいたっては3分の1も食べていない。

客入りはいいし、
20年以上も続いている店だから
相性の不一致と云うほかはありません。

「青蓮」
 東京都千代田区神田神保町1-31-1
 神保町サニービル2F
 03-3259-8080

2025年5月23日金曜日

第3803話 町屋では 月の半ばの おらが蕎麦

暦では五月半ばを過ぎていて
ハイ、この日も雨でした。
よって町屋に行きました。

例によってメトロ直結の駅ビル、
町屋サンポップへ直行する。
いつもの「ときわ」に入りかかったが
ちょいと待てヨ。
毎度毎度、同じ店じゃ芸がなさ過ぎる。

同じサンポップ内の「おらが蕎麦」に
初入店の巻である。
あとで知ったが都内では
八重洲地下街にヤエチカ店があり、
運営はうどんが主力のグルメ杵屋だ。

帰宅後、調べてみたら
北は大宮から南は熊本まで
日本全国津々浦々とまではいかずとも
かなり多店舗展開していた。

おらが蕎麦ねェ。
連想されたのは
信濃では 月と仏と おらがそば

長いこと同郷の大先輩、
小林一茶の句と信じていたが
実は一茶の句ではないという説が有力。

もじったらしいんだ。
信州そば関係者かいな?
まっ、いいか。

ドライの中ジョッキにわさび茎漬け、
そして野沢菜、信州流で攻めてみた。
ジョッキのお替わりをして
品書きとにらめっこ。

通常はもりにいくところなれど
ぶっかけそばにしてみる。
これが意想外に好かった。
色浅黒きそばの上に
花がつお、揚げ玉、切り海苔、
刻みねぎがぶっかかっている。

けれども困ったのはそばの量だ。
他店の大盛りより多いんじゃないかな。
頑張りながら冷酒を所望すると
これまた信州の”おらがそば”と来たもんだ。
杵屋が勝手に作らせたんだろうな。

通路を挟んで隣りの卓に若い娘が座った。
女子高生に毛の生えたくらいの年頃だ。
注文はざるそばと野沢菜。
ほほ~っ、お嬢ちゃん、
なかなかやるじゃないかー。

配膳されても野沢菜は放ったらかし。
先にそばだけ食っちまった。
ん? どういうつもりなんだ? 
いぶかしんで眺めていたら
やおら左手にスマホ、右手に箸を持ち、
野沢菜をパクパク食い始めやがんの。

驚いたなァ、J.C はもとより
酒飲みのオッサンにとって
野沢菜は酒のつまみ。
彼女はスマホのつまみにしてやがんの。
まだあどけなさの残る横顔を
チラチラ盗み見しておりました。

「おらが蕎麦 町屋サンポップ店」
 東京都荒川区荒川7-50-9
 03-3819-1650

2025年5月22日木曜日

第3802話 雑司が谷の弦巻通り (その2)

豊島区・雑司が谷の弦巻通り。
鬼子母神あたりのそば屋に行くつもりが
途中で出逢った鮨屋に惹かれて入店の巻。
先客はカウンターに単身が二人だけ。
鯛と平目、光物のどんぶりのH&Hを
黒ラベル中瓶とともに発注した。

ふと見た壁の写真は王貞治選手と
どこかのオジさんのツーショット。
親方に訊いたらオジさんは亡き先代で
早実時代、王さんの2年後輩とのこと。

ビールのお通しなのか
おかかが載った豆腐が出て来た。
女将さんが「温めてあります」と一言。
ウン、温奴でした。

おいなりさんも一つ出て来た。
ビールのためのものではなくて
豆腐・いなり・味噌椀は
すべての注文に供される。

光物はアジ・イワシ・小肌の揃い踏み。
総勢5種のサカナは小肌こそ1枚だが
他は2~3切れあり、食べ応え十分。
いや、満足いたしました。

店は親方と女将に加え、
大女将も元気に立ち働く。
この方は先代の連れ合いだろう。

品書きにゴーヤ・もずく・豆腐ようなど
沖縄モノがチラホラ。
「親方は沖縄のご出身?」
「いえ、女房が沖縄で・・・」
そうか、なるほどネ。

にぎりの種札にしゃこが居る。
珍しい・・・食べたいな。
いや、今日はムリだが訊いてみた。
「しゃこあるんですネ?」
「ええ、置いてます」
「何処で獲れたんですか?」
「瀬戸内です、小柴はダメですから」
「以前、小柴まで行って鮨屋さんに入って
 お願いしたら『お一人一匹』って
 言われちゃって・・・20年も前ですヨ」
「ハハハ、そうですよネ」

しゃこ好きがしゃこに出逢うと、
看過することなどできやしない。
近々、夜にウラを返す旨、
親方に伝えて、お勘定は金2135円也。

近くの「赤丸ベーカリー」に立ち寄る。
こちらは大正12年(1923)創業。
関東大震災のあった年である。
刻んだピクルスの載るホットドッグと
開店当時は無かったであろう、
チキン南蛮ドッグをブラ下げ、
鬼子母神のけやき並木を
ぶらぶら歩いてゆきました。

「鮨義」
 東京都豊島区雑司が谷2-20-9
 03-3590-5826

「赤丸ベーカリー」
 東京都豊島区雑司が谷1-7-1
 03-3971-6624

2025年5月21日水曜日

第3801話 雑司が谷の弦巻通り (その1)

早稲田行きのバスを護国寺正門前で下車。
不忍通りをそのまま真っ直ぐ西へ。
今日は雑司が谷を散策するつもりだ。
高速道路・副都心線をくぐり、
ゆるやかな坂道を上ってゆく。

ここは弦巻通り。
世田谷区は駒沢公園通りの東側一帯に
弦巻という町があることは
多くの都民もご存じだろうが
雑司が谷にもあるんだ。
かつて弦巻川が流れていた。

弦巻通りは何度も歩いているが
今まで気づかなかった、
「鮨義」なる鮨屋に出食わした。
普段は通り過ぎるところ、
1枚の貼り紙に目が留まる。

1962年創業の当店が
62周年を迎えたという。
ということは貼られたのは
去年の夏になる。
ふ~ん、たいしたもんだねェ。

ついでというわけじゃないけれど
ランチメニューに視線を移したら
多彩な取り揃え、紹介してみよう。

にぎり1人前・ちらし・ねぎとろ丼・
サーモンいくら丼・まぐろづけ丼・
光物丼・鯛と平目ごまだれ丼
1200円均一
にぎり1.5人前1600円

多彩でもここまではフツー。
J.C.のハートをつかんだのは
末筆の一文だった。
丼物はハーフ&ハーフができます
(ちらし除く)

こんな鮨屋はあまりない。
七めんどくさいことを嫌がる、
鮨職人が多いなか、
鮨屋の鑑(かがみ)ですな、実に。

大して食えもしないクセに
東海林さだおサンじゃないけど
あれも食いたい、これも食いたいと
卑しさの塊りみたいな我が性分。
素直に頭(こうべ)を垂れました。

=つづく=

2025年5月20日火曜日

第3800話 ミステリー 社会派 vs 本格派

神保町シアターで目下開催中の
映画で味わう至高のミステリー対決
横溝正史と松本清張
序盤の4本を観てきた。

「悪魔の手毬唄」(市川崑 1977)横溝
「点と線」(小林恒夫 '58 )清張
「張込み」(野村芳太郎 '58)清張
「黒い画集 ある遭難」(杉江敏男 '61)清張

横溝(本格派)vs 清張(社会派)の
ガップリ四つと云いたいが
もともと15本中、5本 vs 10本 では
公平な割り振りとは云い難い。

好みの問題ではあるけれど
横溝の原作はあまりに荒唐無稽。
すべて名探偵・金田一耕助モノで
次から次と殺人事件が起こりまくり、
人が死に過ぎるんだ。

それもド派手な殺しの手口を
女の細腕一本でやり遂げる。
こりゃ、いかんせんムリだろう。
映画だからしょうがないの一言で
片付けられるものではない。

「点と線」に関しては昨年10月10日付け、
第3642話で長々と書いたので
今日はあえて踏み込まない。

清張のミステリー・デビュー作、
「張込み」は原作だと張込む刑事が
一人なのに映画では二人。
それ以外はかなり忠実ながら
肝心の舞台が S市とだけあって
ボカされるものの、
映画は S市を佐賀市と明らかにする。

小説にもこうある。
柚木は町を歩いた。
電車もない田舎の静かな小都市である。
堀がいくつも町を流れている。
そう、佐賀は水路だらけだ。
とてもいい町で行ってみたくなった。

ただ、犯人役の田村高廣がどうしても
殺人を犯した凶悪犯に見えない。
元恋人・高峰秀子の胸に今も生きる好青年。
そうとしか見えないんだ。

「黒い画集 ある遭難」は
山登りを愛する向きにはたまらない。
登山に興味がなくともサスペンスを
楽しめるが J.C.は苦手だ。

若い頃は平気だったけど
歳とともに高い所が怖くなってきた。
恥ずかしながら今では
完璧なアクロフォービアになりました。

2025年5月19日月曜日

第3799話 親鳥パワーの笠岡ラーメン

神保町で横溝正史と松本清張の原作を
映画化したシリーズが始まり、
小まめに通っている。
当日は早めにチケットをゲットし、
ランチを済ませて舞い戻るパターン。

シアターから徒歩1分の至近に
笠岡ラーメン専門店「一元堂」があり、
食べたことないのでトライした。

あれは前世紀末、岡山県・笠岡を訪れた。
岡山市在住の元カノが
ハンドルを握るクルマに乗ってー。
目的はただ一つ「シャコ丼の店」だった。
街の散策や見物はいっさいナシ。
来た・食った・帰った! それだけのこと。

その足で松本清張原作、
「砂の器」の舞台にもなった、
JR木次線・亀嵩(かめだけ)駅に向かう。
同名映画の映像が強く印象に残っていたので。

さて「一元堂」。
いろいろゴチャゴチャ入った、
特製には興味がなく食指も動かない。
シンプルなのは醤油 or 塩。
オーソドックスな醤油をポチッ。
サッポロ赤星中瓶もポチッ。
麺は細・太が択べ、細麺をお願い。
大盛り無料サービスは辞退した。

ラーメンを運んで来た女性スタッフが
カウンターの抽斗をガラッと開けた。
なんか勉強机みたいだな。
中には箸とレンゲとつま楊枝に
白胡椒・ピンク岩塩・山椒・韓国唐辛子。
ふ~む、珍しい作りだネ。

調ったどんぶりには
親鳥チャーシューが7切れ。
白髪ねぎの陰には笹がきの青ねぎも。
あとはシナチクと
茶漬け用みたいなカラフルあられ。

鶏出汁のよく出たスープに
ほぼストレートの細麺は
歯応え、ノド越しともによろしい。
ただし、親鳥が硬いのなんのっ。
入れ歯の人にはムリだろうな。

隣りに座ったアンちゃんが
塩ラーメンを食べている。
一口すすってはウン、ウンとうなづく。
そんなに旨いんなら塩も試そうかな?

翌週、再訪した。
スープが変わるだけで他はみな一緒。
ウン、塩の方が好きだ。
アンちゃんのうなづきに納得。
卓上のニラダレ、
煮干しが丸ごと溺れてる、
にぼ酢なんぞも投入したが必要ないな。

横浜家系は一度で懲りたし、
二郎系はいまだに未食。
アッサリ系を愛するJ.C.ながら
笠岡ラーメンは許容範囲内でした。

「笠岡ラーメン 一元堂 神保町店」
 東京都千代田区神田神保町1-1
 電話ナシ

2025年5月16日金曜日

第3798話 並んだメイドから 声は掛からず

所用を済ませ、宵闇迫りくる秋葉原。
絶好の晩酌タイムである。
東京でJ.C.が嫌いな街、
ワースト3の一翼を担う場所に
1軒だけ好んで訪れる店がある。
昼めしも晩酌も秀にして逸な両刀使い、
「赤津加」だ。

神田の旧連雀町から昌平橋を渡り、
悪名高き(?)電気街にやって来た。
その真ん中に位置する店の前に
ズラリ居並ぶのは揃いも揃って
真っ白なヘアキャップの少女たち。
そう、メイド・カフェのメイドである。

頭の中を童謡「チューリップ」が流れる。

♪ さいた さいた メイドのはなが
  ならんだ ならんだ 
  あか しろ きいろ
  どのはなみても きれいだな ♪

着ているオベベはともかくも
容貌はあまりきれいじゃないけれど
その蜜に引き寄せられて
蝶々や蜂や銀蠅まで舞い踊る。

ところが峠を過ぎたJ.C.は
すでに彼女たちの対象外。
目の前をずんずん歩いてゆくのに
誰一人、声を掛けてくる花とてない。
数年前はけっこう声掛けがあったのに
歳は取りたくないもんだ。
まっ、わずらわしくなくていいけどネ。

引き戸を引くと
コの字カウンターの先客は
カップルと仕事帰りのリーマン二人連れ。
コの字の真ん中に陣取って
黒ラベルの中瓶をお願い。
お通しは真鯛1切れとワカメのポン酢。

最初に必食の逸品、鳥もつ煮込みをー。
小鍋仕立ては、もつの各部位に
豆腐・コンニャク・玉ねぎ。
以前より皮が増え、必ず1粒あった、
小豆(脾臓)が見当たらない。
ちと残念。

菊正生貯蔵酒生酛300mlに移行する。
海老と新茶葉のかき揚げも追注。
ところが酒は美味いのに
かき揚げはイマイチ、いや、イマニ。
量を増やすためか小海老と茶葉より、
ナスとエリンギがたっぷりなんだ。

かき揚げは居酒屋よりも日本そば屋。
つくづく思い、肝に銘じた次第です。

「赤津加」
 東京都千代田区外神田1-10-2
 03-3251-2585

2025年5月15日木曜日

第3797話 「あしたのジョー」のふるさとで (その2)

山谷のはずれの泪橋。
「居酒屋 ニュー泉」のカウンターで
ビールを飲んでいる。
一皿500円のくじベコがなかなかに良質。
感心することしきりであった。

日本酒に切り替えた。
大関生貯蔵酒300ml がよく冷えている。
つまみを何かもう1品と
コマイ(氷下魚)を所望した。
これも2尾で500円。

ハタハタ(鱩)でん、
シシャモ(柳葉魚)でん、
北の海を泳ぐサカナたちは
ホクホクとした白身が持ち味。
アジやイワシのように
青背の特徴の魚臭さがない。
サンマだけは北で生きてるけどネ。

お勘定は2600円也。
福州生まれの小姐に
「また来るネ」
「待ってますっ!」
手を振って退店した。

泪橋から吉野通りを南下する。
突き当りは言問通りと江戸通りが
交差して五差路の言問橋西詰になるが
そこまで行かずに手前で
通りすがった「居酒屋 アロー」。

チラリ中をのぞくと
地元の常連らしきオッサンたちが
けっこうな盛り上がりを見せている。
飲み足りないこともあり、
引き込まれるようにステップ・イン。

ドライ中瓶のお通しはブリ大根。
周りの雰囲気に溶け込みながら
気分よく飲むビールは格別だ。
隣卓の四人組がきこしめしながら
高尚な会話に口角泡を飛ばしまくる。

オスマントルコを語り出した、
J.C.のすぐ隣りのオッサンが
「あのほうらビザンチウムはさ、
 も一つ名前があって何だったっけな?
 あ~、思い出せん!」
お節介なおジャマ虫は聞き流すこと能わず。
「コンスタンティノープル」
割って入ると
「アッ、それそれ、アリガト!」
ここから会話が始まってもうた。

店はママと妹と娘のスリーオペで
これも一種の家族経営。
そのうちカラオケが始まって
店内はさらに盛り上がる。

四人組が席を立ったのを潮に
こちらもお勘定。
ビール2本とお通しで1600円でした。
これから吉原のソープ街を流します。
いえ、背中は流しませんけどネ。

「居酒屋 ニュー泉」
 東京都台東区清川2-39
 03-3871-6681

「居酒屋 アロー」
 東京都台東区清川2-16
 電話ナシ

2025年5月14日水曜日

第3796話 「あしたのジョー」のふるさとで (その1)

東京に泪橋は二つある、北と南に。
南千住の小塚原と立会川の鈴ヶ森。
それぞれ刑場に向かう場所で
科人(とがにん)と家族が
今生の別れに際し、泪にくれた。

今回、もう一つあると知った。
京王線・明大前駅から
明治大学・和泉キャンパスへの道すがら
甲州街道を跨ぐ歩道橋が
泪橋と呼ばれるそうだ。

明治大学には早稲田大学の入試に
不合格となった学生が多く、
彼らが涙して橋を渡るんだそうだ。
ホンマかいな?
明も早も大した変わりはないだろに。
取って付けたみたいで嘘っぽいな。

それはそれとして
台東・荒川の区界に位置する泪橋。
日暮里発、亀戸行きのバスに乗ってたら
泪橋交差点の一角に
居酒屋の暖簾が見え、急いで下車。
書き遅れたが此処は
「あしたのジョー」のふるさとだ。

「ニュー泉」は昼前に開いて
14時にはいったん閉じる。
看板に中華居酒屋「泉」の名残りがあるが
現在、中華は提供していない。
(肉野菜炒めはあったけど)
だから「ニュー泉」なんだネ。
観音裏「ニュー王将」同様のネーミング。
あちらは喫茶店から洋食居酒屋。

オバちゃんとオネエちゃんのツーオペだが
見えない厨房に男手もあるようだ。
ドライの中瓶を飲みながら
壁の品書きを見ているとネエさんが
「コレもありますっ!」
オススメのボードをかざしてくれる。
すかさず鯨のベーコンを通した。

言葉のイントネーションが
日本人じゃないので
「アナタは何処から来たの?」
「中国ですっ!」
「中国の何処?」
「福建省の福州」

J.C.は若い頃、シンガポールに居たが
彼の地の同僚によく言われたものだ。
もし、中国人を恋人にするんなら
福建人がいいヨ。
間違っても広東人はいけないヨ。
性格が強すぎるからネ。

=つづく=

2025年5月13日火曜日

第3795話 ご無沙汰しました キラキラ橘

好きな商店街なのにずいぶんと
ご無沙汰してしまったキラキラ橘。
此処は墨田区・京島で
最寄り駅は東武伊勢崎線、
あるいは京成押上線の曳舟である。

日本そば「五福家」の敷居をまたいだ。
初めて訪れたのは忘れもしない、
令和4年7月8日。
安倍元首相が凶弾に倒れた、その日だ。
地元客が小宴会を催していたものの、
一同の眼はTVの画面に釘付けだった。
さもありなん。

その日、もりそばを食べたあと、
壁に貼られた1枚の品札に目がとまる。

スープがうまい 
そばやのラーメン 650円

これが気になって翌週ウラを返した。
看板を偽ることなくスープはうまかった。

ふと思い出し、3年ぶりに再訪。
ドライ中瓶を飲みつつ、割り箸をパキッ!
細打ちちぢれ麺と相変わらずの醤油スープ。
チャーシュー・シナチク・ナルトに
ほうれん草が好感度を高める。
小松菜だと減点、ワカメなら大減点。

その足で歩くキラキラ橘。
これまた3年前におジャマした「千丸」へ。
たこ焼きの幟を掲げるくせに
なかなかたこ焼きにありつけない店で
居酒屋も兼ねている。

缶ビールが気にさわるけれど
銘柄は気に入りにつき、許す。
何か一品、つまみを取ろうと思うが
この日もまた、たこ焼きは準備中。

ママ独りの切盛りとはいえ、
どうなってんだい、このタコ!
もとい、たこ焼き屋!
仕方なしにアサリとネギのかき揚げをー。

だけどネ、ラーメンのあとだから
とてもじゃないが完食はムリ。
しかもかなりデカいんだ。
「五福家」に立ち寄った旨を告げ、
半分残しを認可されたのでした。
別腹のビールのほうは
しっかり3缶いただきやした。

「五福家」
 東京都墨田区京島3-52-1
 03-3611-3698

「千丸」
 東京都墨田区京島3-19-3
 03-6657-1239

2025年5月12日月曜日

第3794話 区役所そばに 老舗そば

しょっちゅうバスで通りかかる荒川区役所。
すぐそばにわりかし大きな日本そば屋が
在ることは認知していたが
あらためて屋号を確認したら「瀧乃家」。
都内各地に散見される、
たきのや系列はみな老舗と呼んでよい。

先日、東尾久の「滝乃家本店」で
おそば少な目、ごはんも少な目の、
やさしさあふれる親切セットに
頭(ず)を下げながら
舌鼓を打ったばかり。

一度行っておこうと訪れる。
大毎オリオンズの本拠地だった、
東京球場の跡地に建つ、
荒川スポーツセンターに続く道筋が
二又となる角地で出入り口も二箇所。
客商売には打ってつけだ。

そば・うどん・丼物はもとより、
定食・セット・つまみまで
多彩なラインナップから
穴子天丼セット(1200円)をもりそば。
サッポロ黒ラベル中瓶とともに通した。

穴子は小ぶりなメソッ子1尾。
デカいものよりよほどよい。
根菜たっぷりのけんちん風味噌汁に
新香は白菜漬&きざたく。
大関生貯蔵酒1合瓶を追加して
美味しく平らげた。

品書きの一品に目がとまる。
海鮮天ぷら定食(1200円)は
海老・穴子・いか・きす・
かけor もり・ライス付き。
ここまで揃って、この値段?
にわかには信じられない。

翌週、舞い戻り、かけそばでお願い。
海老・きす各1尾に穴子・いか各1片。
かけそばなので味噌汁は付かず、
新香はキャベツきゅうりもみ&きざたく。

口元に運びながら思う。
役者は揃っているものの、
前回の穴子天丼にはかなわない。
理由はただ一つ。
当店の天ぷらは天つゆよりも丼つゆと
相性が好いのでした。

「瀧乃家」
 東京都荒川区荒川1-1-22
 03-3801-2411

2025年5月9日金曜日

第3793話 松戸と尾久がつながった (その2)

西尾久「北珍」から一週間後、
孫弟子が営む松戸市「大八北珍」を訪れた。
松戸市にありながら都営の八柱霊園に
岡澤家のお墓があってGWの墓参は定例。
その日も墓前を掃き清め、
香華を手向けてから向かった。

夕方の開店時間、17時ちょうどに伺うと
早くも近隣の常連客が詰め掛け、
10分過ぎには満卓と相成った。
界隈の超人気店なのである。

迎えてくれた女将サンとしばし談笑。
小台(西尾久)の「北珍」にふれたら
目を真ん丸にして驚いていた。
あちらのオヤジさんが云う通り、
こちらは三ノ輪「大八北珍」の出身だった。

「千駄木の日医大にはまだ通院してるの?」
「甲状腺だったんだけど、もう行ってないの」
「いや、ボクもネ、
 日医大で白内障の手術をしたんだヨ」
「そうなの? いい病院だものネ」
「じゃ、身体の調子はいいんだ?」
「ううん、救急車を10回も呼んじゃった」
「ん? 回数券があったほうが便利だヨ」
「うん、アハハハ!」

ドライの中瓶を通すとお通しは
大根&コンニャクの炒め煮。
「北珍」と比べるつもりはないが
焼き餃子を発注した。
当店は何を食べてもハズレがない。

紹興酒の珍五年に切り替える。
キンミヤ焼酎と同じ600cc ながら
度数は25度に対して16度だから
左党にはどうってこたあない。
常温をクイクイ飲っていた。

「大八北珍」に来ると
女将発案の穴子丼が必食。
これは2種類あって
カツ丼みたいな玉子とじと
大根おろしの載った蒲焼き風だ。
過去に2~3度いただいたけど
いつも玉子とじなので蒲焼きに初挑戦。

ラーメン付きが1250円と破格につき、
麺半分で頼んでしまう。
当店のラーメンは
目黒区・祐天寺の「来々軒」にも似た、
昔の支那そばを偲ばせる。

店は家族経営。
夫婦と長女と次女のほかに
若い娘が居たがバイトなのか
孫なのか訊きそびれた。
いずれにしろ商売繁盛はご同慶の至り。
また来年の GW におジャマしまッス。

「大八北珍」
 千葉県松戸市仲井町3-13
 047-368-1609

2025年5月8日木曜日

第3792話 松戸と尾久がつながった (その1)

あれはひと月前のこと。
都電荒川線の小台から
今はさびれ果てた目抜き通り、
小台銀座を南下していた。

道筋を通り抜けたところで
1軒の町中華に目が釘付け。
餃子ハウス「北珍」だった。

ん? 「北珍」とな?
連想されたのはかつて棲んだ、
千葉県松戸市・上本郷に
今もある「大八北珍」だ。

その日の昼食は済んでおり、
数日後に舞い戻った。
店は年配の店主独りの切盛り。
70歳はラクに超えているだろう。

カウンター3席にテーブルが3卓。
先客は一人だけだった。
空いていた卓に着き、
キリンラガー中瓶を通すと
きゅうりの浅漬けが付いて来た。

まずは ”餃子ハウス” に敬意を表して
焼き餃子を発注してみた。
うん、なかなか。
続いてラーメンを麺半分でお願いすると
「難しい注文をするなァ」ー店主が一言。
(そうかなァ)ー言葉を飲み込む。

「やったことないけど、味はどう?」
「うん、美味しいヨ」
会計時に訊ねた。
「松戸の先の上本郷に『大八北珍』って
 あるんだけど、関係ありますか?」
「うん、あるヨ」
「そうか、やっぱりねェ」

店主によると彼の先代(亡父)が
「北珍」を開いたのは吉原の見返り柳そば。
そこの弟子がのれん分けして三ノ輪に開店。
松戸はそのまた弟子の店だった。

あとで判ったことだが
「北珍」は油そばの元祖という説がある。
J.C.には油そばを食べる習慣がない。
生涯で試したのはただ一度きり。
本郷三丁目の「とんちん亭」で
確か西暦二千年前後だったと思う。

これも何かの因縁だと、後日再訪。
食べてはみたものの、やっぱ合わないや。
最後に追いスープなんぞもいただいたが
ニンニクが強烈過ぎて
さしものニンニク好きもマイッたのでした。

「北珍」
 東京都荒川区西尾久4-1-11
 03-3893-2820 

2025年5月7日水曜日

第3791話 ヒレカツと せいろのコンビ 神楽坂

不忍通りを走る都営バス、
その早稲田行きに乗った。
いつものようにそれから行く先を考える。
降りたのは江戸川橋のたもとだった。

神田川に架かる橋なのに
なぜ江戸川橋なのかというと、
神田川の旧称が江戸川だったからだ。
意外と知らない人の多い由来である。

歩いて楽しい地蔵通りをぶ~らぶら。
わりかし急な坂を上って
エリアの守り神、赤城神社に出た。
今度は神楽坂を下り、大久保通りを横断。
毘沙門天 善國寺の手前、
日本そば「山せみ」を通りすがった。

此処はいつからか、
そば&とんかつの二刀流に切り替わった。
そば専門の頃に二度ほど利用したが
とんかつを試すつもりになって入店。

○得ランチセットは4種類。
A 名物タレカツ丼
B ヒレとんかつ(ライス付き)
C カツカレー丼
D 小天丼

A・B・C は1400円。
D のみ1450円で
せいろそば or 花巻蕎麦から択べる。
ここは B をせいろでお願いした。
冬場なら花巻にしただろうがネ。
ビールは黒ラベル生のグラス。

小さく丸く揚がったヒレカツ2個は
一刀両断され、都合4ヶが金網の上。
こんもり繊キャベとパセリ1片。
練り辛子が脇に一刷毛。
横長の木箱に入ったそばには
さらしねぎ&粉わさびと
大根おろしが添えてある。

ほのかなピンクの豚ヒレ肉は
理想的な揚げ上がり。
見るからにジューシーだが
わが舌はさほどの美味を感知せず、
「とん八亭」のロースと比べたら
落差はけして小さくない。

そば&つゆは水準をクリアして
粉わさよりおろしがうれしい。
珍しくビールをグラス1杯で切り上げた。

帰宅するにはまだ早い。
濠端を市ヶ谷に向かうか、
飯田橋駅前から大神宮方面へ抜けるか、
思いをめぐらせながら下る神楽坂。
天気の好い日の食後の散歩ほど
楽しいものはなく、
生きる歓びを実感しておりました。

「山せみ」
 東京都新宿区神楽坂5-31
 03-3268-7717

2025年5月6日火曜日

第3790話 外人が たぬき小路に あふれけり

今日は御徒町へ買い出し。
ブランデーが残り少なくなったのと、
冷凍庫の生たらこの在庫が切れてネ。

その前の腹ごしらえは界隈で済まそう。
久しぶりに「とん八亭」に寄ろう。
ロースかつがグンのバツだからネ。
上野広小路に近い中央通りの1本東側、
たぬき小路なる短い細道に足を踏み入れた。

おっ! 珍しく誰も並んでないゾ。
のぞいたらカウンターに空席。
指パッチンしてスス~ッと入店。
店は夫婦二人きりの切盛りで
ラガー中瓶とロースかつ定食を発注。

背後の3卓を全て外国人が埋め、
揃いも揃って欧米系だ。
カウンター客は国産のオジさんと
オバさまが1人づつ単身。

それにしても当店、
こんなにインバウンドが多かったっけ?
そうか、最後に来たのは4年前。
コロ助が猛威を振るっていた時期だった。

定食が調い、中瓶のお替わり。
6切れカットのロースは脂身少なめ。
繊キャベのほかに
ポテサラ少々とパセリ1片。
豆腐&みつばの味噌椀。
半分でお願いした白飯。

そして気が利いてるのは浅漬けだ。
きゅうり・大根・にんじんに加え、
3片の新ごぼうが出色。
ふ~む、新ごぼうかァ。
こんなところに店主の技がキラリと光る。
卓上の一筆を紹介しておこう。

ソースは何がいいですか?
お好みの物をご自由にどうぞ。
お勧めしているのは、とんかつにはとんかつ
ソース、魚介類にはウスターソースですが
それぞれ醤油も人気です。
キャベツにはマヨネーズの用意もあります。
また岩塩は最近の流行りですので是非お試し
下さい。
迷ったら一切れずつ違う味にするのもいいし
最後のひと口をウスターソースにすれば、軽
い食後感になると思います。

ご親切にどうも。

カウンターのオジさん&オバさまが退けたあと、
ドヤドヤっと男女三人組が入店してきた。
飛び交うランゲージはおそらくタイ語。
続いてアメリカン・イングリッシュのカップル。
外国人に囲まれた食事は
なかなかオツなものでした。

「とん八亭」
 東京都台東区上野4-3-4
 03-3831-4209

2025年5月5日月曜日

第3789話 「芭蕉」のたぬきは 古だぬき

江東区・森下の「芭蕉そば」。
初回に味をしめて何度も利用している。
朝5時過ぎの開店だがいつも13時に現れ、
閉店の14時前にはおいとまする。
行けば缶ビールを3缶やっつける。
先日なんか2缶飲んだら在庫が切れた。

直近はポカポカの午後。
プシュッとやって、たぬきそばをお願い。
当店のは同じたぬきでも古だぬき。
何のこっちゃい? となりますわな。

通常は揚げ玉がプカプカ浮くが
此処のは春菊・にんじん・玉ねぎなど、
野菜天やかき揚げを細かく砕いて使用。
各種野菜がフルに使われるので
フルだぬきなんざんす。

単なる揚げ玉より断然美味い。
その日もオヤジさんとの会話を楽しみ、
3缶飲んで、じゃ、またネ。

清洲橋を渡ると西詰にパネルあり。
紹介してみよう。

土木學會選奨土木遺産 2000年
帝都を飾るツイン・ゲイト(清洲橋)

「復興は橋より」、これが関東大震災
後の復興事業の合い言葉でした。帝都
を代表する隅田川の入口にあたる第一、
第二橋梁は、筋骨隆々とした男性的な
イメージ(永代橋)と優美な下垂曲線
を描く女性的なイメージ(清洲橋)で
演出されました。
 これに加えて土木学会では、次のよ
うな理由から永代橋と清洲橋をワンセ
ットにして、第一回選奨土木遺産に選
定しました。

・二つの橋は、近代橋梁技術の
 粋をあつめてつくられた震災
 復興橋梁群の中心的存在である。
・清洲橋は、美しさを追求した特
 殊な吊橋である。

なるほどねェ、納得いたしました。

隅田川右岸の清洲橋西詰は中洲という。
正しくは日本橋中洲。
日本橋をアタマに冠する地番で
そのあとに ”町” が付かないのは
此処だけである。

古くは永井荷風が通った中洲病院が
あったけれど、今は跡形もない。
さして高くもないマンションが建ち並び、
店舗は「まいばすけっと」が
一つ寂しく在るのみだ。

NY赴任時代、出入国の際にお世話になった、
東京シティ・エアターミナル(TCAT)を
久しぶりに訪れる。
同時多発テロ以降はセキュリティの関係で
チェックインが出来なくなってしまった。
その代わり、飲食店がヤケに増えている。

往時は常宿にしていた、
隣接するロイヤルパーク・ホテルへ。
NYに戻るときはまずフロントに電話。
荷物を積んだワゴンをベルボーイが
TCATのカウンターまで運んでくれる。

よってホテルのルームで荷造りしたら
その荷物を受け取るのは
JFK 空港のターンテーブル。
あの便利さは何物にも代え難く、
宿泊はロイヤルパーク一択に
なったのでした。

「芭蕉そば」
 東京都江東区常磐1-15-4
 03-3634-0679

2025年5月2日金曜日

第3788話 山の手の 荒川線が 世田谷線 (その2)

世田谷線・世田谷駅のスナック「U」。
初老のママに迎えられた。
席に着き、周りを見渡してビックリ。
平均寿命、もとい、平均年齢が
すさまじく高いのだ。

どう見てもみなさん揃って
75オーバーの後期高齢者。
見てはいけない世田谷区の裏側を
のぞいてしまった気がした。

ビールはキリンのどごし<生>。
発泡酒かァ、しょうがないなァ・・・
思いつつ、3缶も飲んじまった。
お歳のせいか皆さん、
歌はけっして上手じゃないが
仲良し感は伝わって微笑ましい。
1時間半の滞空でおいとました。

隣り駅の上町へ移動し、
北インド料理「スパイス マジック」へ。
これは予定通りの行動。
店主が TV東京の「テレビチャンピオン」、
”カレー職人選手権” で優勝している。

狙いは ”よりみち バル” なるセット。
おつまみ3種に飲み物1杯で
850円とお安い。
つまみが、チキン・ティカ、
パパド(緑豆せんべい)、鶏皮チップスに
オニオン・アチャールまで付いてきた。
飲み物はインドのラガービール、
キング・フィッシャー(カワセミ)を択ぶ。

するとビールがヤケに強い。
ラベルを見たらストロングで
アルコール度8%と来たもんだ。
好きな銘柄ながら
ストロングの存在は知らなんだ。
強いビールは好みじゃなく、
つまみ類もまぁそれなり。
値段が値段だけに文句は云えない。

宮の坂を経て山下に到達。
小田急線・豪徳寺が隣接している。
東武伊勢崎線・牛田と
京成本線・関屋の位置関係に似ている。

しばらく駅周辺をぶらついた末、
立ち飲み「風林」に滑り込んだ。
豪徳寺駅前交番の真向かいだ。
4人の先客は揃って男女の若者。
下町とは雰囲気がだいぶ異なる。

ハートランドの生中でスタート。
立ち飲みだけに客は短時間で
出たり入ったりするが、みんな若い。
オッサンは長居無用と知りつつも
1杯だけじゃ愛想がない。
茜霧島のロックを所望した。

帰りは小田急線で豪徳寺から一本。
代々木上原で乗り換えるが
常磐線直通・我孫子行きはホームの反対側。
車内はガラガラで
あとは乗り越しに注意すればいいだけ。
眠れる森の美女の如くに眼を閉じました。

「スパイス マジック」
 東京都世田谷区桜3-25-3
 03-5426-6955

「風林」
 東京都世田谷区豪徳寺1-43-6
 03-3420-0133

2025年5月1日木曜日

第3787話 山の手の 荒川線が 世田谷線 (その1)

「来々軒」を機嫌よく退店し、
祐天寺駅前で三軒茶屋行きのバスに乗る。
東急世田谷線の起点から歩き始めた。
この路線は言わば、山の手のチンチン電車。
そう、荒川線みたいなものである。

西太子堂、若林を経て
松陰神社前にやって来た。
世田谷区の駅前商店街のうち、
好きなのは二つ、尾山台と此処である。

町のランドマークは松陰神社に譲っても
ナンバー2の「ニコラス精養堂」。
創業1912年は明治45年にして大正元年。
老舗中の老舗が駅踏切の脇で今も盛業中だ。
シーザーサラダ・ドッグと
カスタード・クリームパンを買い求めた。

その隣りに「吉良」という名の
炭火焼ダイニングがあった。
存在に気づかなかったくらいだから
そんなに古い店ではなさそう。
何気なしに店先の品書きを見とめると
まとう鯛の照り漬け焼きがある。

当欄でも幾たびか紹介したまとう鯛。
英語こそジョン・ドーリィだが
ラテン系のフランスではサン・ピエール。
イタリアだと、このほど帰天召された、
フランシスコ教皇のお膝元、
サン・ピエトロとなり、聖なる魚なのだ。

中華そばを食べたばかりながら
こればかりは看過できなかった。
まとう鯛の単品が可能かどうか、
お伺いを立てたらOK。
赤星中瓶とともにお願いする。

皿には切り身がストンと乗ってるだけ。
でも、いいんだヨ、これでー。
サイドのエンガワ部分が
カレイやヒラメに似てポリポリいけちゃう。
会計は2200円、ごちそうさまでした。

松陰神社を参詣し、さらに歩く。
隣り駅の世田谷に到着した。
区名のタイトルロールを張ってるけど
ちっぽけな駅である。
世田谷線の駅はおおむねこんな感じだ。

生大、中瓶と飲んで来たのに
天気が好いせいか、ノドが渇く。
毎度お世話になる牛めし屋は見当たらない。
見切って先を急ぐか?

するとパッタリ巡り合ったのが
「U」という名のお店。
2階から音楽が落ちて来る。
歌声も聞こえた。
ここはカラオケ・スナックだ。

世田谷くんだりまで遠出して
スナックもないもんだ。
立ち去ろうと思ったけれど、
ビールは飲みたい。
ええい、ままヨ、行っちゃえ!
階段をトントン上り始めました。

=つづく=

「ニコラス精養堂」
 東京都世田谷区若林3-19-4
 03-3410-7276

「吉良」
 東京都世田谷区若林3-19-4
 03-3413-6556