2023年6月9日金曜日

第3293話 京急蒲田のアーケード

都営浅草線を泉岳寺で
京浜急行の特急列車に乗り換えた。
今日の狙iいは大田区・梅屋敷の洋食屋だが
特急は停まらないので一つ先の京急蒲田下車。

各駅停車で戻ってもいいが歩くことにする。
駅の改札は一箇所、ホームをずいぶん歩いた。
それも梅屋敷とは逆の雑色方面へ。
駅舎を出るとそこには
アーケードの商店街が口を開けていた。
”あすと”なる名前が付いている。

気まぐれなJ.C.ここでコロリと予定変更。
この商店街には界隈で人気の定食屋があるのだ。
「井戸屋」に来たのは
前回のラグビーW杯の最中だったから4年前。

単身客はみな奥の厨房前カウンターへ。
店頭のボードにあった、
日替わりサービス定食(700円)を通した、
おかずは子持ちかれい煮付けとハムカツだ。

此処のビールは確かキリンだったな。
お運びのオネバさんに確認したら
やはり瓶も生もキリン。
苦みが薄めの生をお願いした。

大田区も南へ下って蒲田ともなると
六郷川(多摩川の最下流)のすぐそば。
川の向こうの生麦にはキリンの大工場が控える。
よってこの辺りはキリンのテリトリーなのだ。

値段が値段なのにそこそこのサイズの煮がれい。
小型のハムカツはハムではなく、
よくありがちなソーセージ。
千キャベの脇には春雨サラダも添えてあった。

あとは桜大根&緑のキューちゃん風に
油揚げ&キャベツの味噌汁。
すばらしくはなくとも実直な定食である。
この商店街は若者好みのガッツリ系が目立つが
年配者にはちとキツい。
よって当店がオッサンたちの需要を
一手に満たしている。

生をもう1杯いただき、お勘定は1780円也。
アーケードを抜けたらJR蒲田駅に通ずる道筋。
カンカン照りにつき、バスに乗ろうか電車にしよかー。

日本最初の歌う映画スター、
高田浩吉の「大江戸出世小唄」を
口ずさみながら歩いてゆく。

♪   土手の柳は 風まかせ
  好きなあの子は 口まかせ  ♪

今日も成り行きまかせのJ.C.でした。

「食事女 井戸屋」
 東京都大田区蒲田4-5-7
 03-3739-4316

2023年6月8日木曜日

第3292話 板橋の佳店 再び

隔月の食事会がほぼ定例化した六人会。
此度の舞台は板橋区・小茂根の和食店「樽見」。
最寄りはメトロ有楽町線・小竹向原だ。
何度もうかがっているが10年ほどご無沙汰した。

屋号「樽見」を目にすると
オートマティカリーに連想するのは
映画「飢餓海峡」。
水上勉の原作は未読ながら
内田吐夢がメガホンをとった映画は何度も観た。

主演の両優、三國廉太郎と左幸子の存在感に圧倒される。
三國扮する殺人犯、犬飼多吉が後年、
京都・舞鶴で名を遂げ、財を成して樽見京一郎を名乗る。
よって「樽見」に来ると三國の顔がまぶたに浮かぶのだ。

食の不毛地帯、板橋区にあって「樽見」は稀有な存在。
おそらく区内随一の飲食店ではなかろうか?
食材の質が極めて高く、包丁も鋭い。
下ごしらえ、味付けともに申し分がない。

かつて利用した際はいつも多人数でおジャマし、
河豚か毛蟹を愛でることが多かった。
J.C.の要望により、
幹事が毛蟹を打診してくれたのだが
目が飛び出るほどに超高価。
諦めざるを得なかった。

よって今宵の主役は刺し盛りである。
あとは各自、思い思いの一品料理を
ランダムに通していった。
かなりの品数に達したため、
わが注文は水茄子だけにとどめおいた。

刺し盛りの内容は
真鯛・真あじ・〆さば・中とろ・
甘海老・つぶ貝・するめいかなど。
あと何かあったかもしれないが
記憶の範囲を超えている。

そのあとは料理が次から次へと運ばれ来た。
鳥から揚げ・チキンサラダ・生ハムサラダと
普段、自分ではまず頼まない品々のオンパレード。
一同の食欲には恐れ入る。

生ビールから冷酒にチェンジ。
麒麟山・久保田千寿・酔鯨と継いで
いや、ずいぶん飲んだな。

締めは日本一の太さと柔らかさを誇る伊勢うどん。
日本各地からお伊勢参りに訪れる、
参拝客の疲れた胃袋を慮ったヤワヤワうどんだ。
さほど美味しいものでもないが
霊験あらたかにしてご利益もあろう。
会計は一人アタマ8千円でありました。

「魚菜酒房 樽見」 
 東京都板橋区小茂根1-10-17
 03-3959-0885

2023年6月7日水曜日

第3291話 雨の午後 過小評価を改めた

雨の日は遠出をしない。
遠くへ行ってもその町を歩き回れないからネ。
バスにも乗らない。
常にメトロ千代田線の一本勝負である。

いったん地下に潜ってしまえば
乗り換えもさほどわずらわしくないが滅多にしない。
よって行く先は限られる。
北千住の飲み屋ストリート、メトロ町屋の駅ビル、
神田連雀町の旧市街、有楽町&日比谷のガード下。
そんなところだ。

この日は北千住。
3カ月前にも訪れた居酒屋「幸楽」である。
入口に傘をさして客を呼び込む、
オネエさんは毎度の光景。

オーダーを取ってくれるのはポッチャリした新人。
どうも手元がおぼつかない。
日本語もたどたどしい。

「ワタシ、日本語がまだちょっと・・・」
「いいヨ、いいヨ、ゆっくりで」
「ありがとござます」
「どこから来たの?」
「ベトナムです」
「エッ、じゃあ女の子はみんなベトナム?」
「そです」

わりとみんなおとなしいから中華系ではないと
踏んでいたがベトナムだったかー。
ミャンマー辺りだと思ってた。
ドライの大瓶をポチャにお願いした。

本日のオススメボードにキジハタ刺しがあり、
小躍りしながら即注。
しばらくして焼きとんのレバとシロをタレでー。
キジハタにはわさびのほかに紅葉おろし&ポン酢。
これがうれしい。

焼きとんも殊にシロがバツのグン。
下茹でジャストでクニュクニュ感がすばらしい。
此処の焼きとんってこんなに旨かったっけ。
タレがちょいと緩いけど、コレにはコレでいいかも?

イワシ天ぷらを追注し、ホッピー白に移行する。
前回のハゼ天も好かったが
今日のイワシもなかなかだ。
ここで判ったことに厨房で揚げているのも
ベトナム人のオニイさん。
穴子天、どぜう唐揚げなども器用に揚げている。

(中)をお替りし、先刻のシロを忘れられずにもう1本。
ついでにタン元を、こちらは塩だ。
おかげで今日も楽しい雨の午後となった。
今まで過小評価していた「幸楽」の格上げ決定。
来れば立ち寄る(晴れの日も)ことにする。
北千住のブレイク・ルームとなりました、めでたし。

「幸楽」
 東京都足立区千住2-62
 03-3882-6456

2023年6月6日火曜日

第3290話 仲間を誘って 夜の「専門店」

読者は覚えておらりょうか?
2カ月あまり前に紹介した、
本郷三丁目のタイ料理店のことをー。

その名も奇妙な「ガパオ専門店」。
グリーンカレーとジャスミンライスの
コンビネーションに魅了され、
その後、何回か利用させてもらった。

いつか夜に赴き、いろんな料理を味わいたいと
機会をうかがっていたところ、念願がかなった。
パンの専門家、通称P子から声が掛かったのだ。
J.C.オススメの店が希望とあって
飛んで火に入る夏の虫、即断即決であった。

面子はいつもの顔ぶれ。
カレーの達人、O野チャンと
今回は旦那を追ってアラバマに赴任した、
M央の代わりにP子の元同量、Mき。
19時の終結である。

生ビールやらハイボールやらで
ジョッキとグラスを合わせた。
それにしても此処の大ジョッキはバカデカい。
浅草の「神谷バー」並みだ。
そのぶん中ジョッキは小さく大の半量以下。

最初に通したのはソムタム(青パパジヤのサラダ)、
ポーク串焼き、チェンマイ・ソーセージ。
粗挽きのソーセージがとても好い。

注文外の生春巻きが供された。
タイ人のお運びさん曰く、
「予約してくれたのでサービスです」
うん、良い店だネ。

大ジョッキを2杯空け、
ハーブ入りのタイ・ウイスキー、
メコンのハイボールに切り替えた。

ヤムウンセン(春雨サラダ)と
パッタイ(タイ焼きそば)を追加する。
パッタイに使用される、
クイティオ(米麺)のノビやかな歯ざわりが
口中に快感を呼び込む。

当店の締めはもちろんジャスミンライス。
相棒は当然カレーだ。
グリーンとマッサマンのつもりだったが
O野チャンはマッサマンの甘みが苦手。
プーパッポン(蟹と玉子)にした。
すると蟹が珍しくもソフトシェル・クラブだった。

結局は薬局、「ガパオ専門店」に来ておいて
ガパオを食べるヒマがありませんでした。

「ガパオ専門店」
 東京都文京区本郷3- 30-7
 03-3868-0370

2023年6月5日月曜日

第3289話 みんな大好き ねぎせいろ (その2)

明治32年(1899)創業の「翁庵」。
敬愛する池波正太郎翁が贔屓にした、
旧神田連雀町「まつや」を
コンパクトにしたような空缶にくつろいでいる。

2枚の色紙であった。
誰が記したものか
字を読めない不良品が多いなか、珍しく読めた。

東京のおそばらしい
おそばだと思います
   土井善晴

本当はラーメンよりも
そばが好き
   林家木久扇

アッサリとした短文ながら
二人の個性がシッカリ伝わる名文ですネ。
山田クン、ザブトン1枚づつ。

そしてねぎせいろの後半戦に突入。
最初からずっと思っていたのだが
当店のそばはヤケに長い。
10年ほど前から他店でも感じているが
ここのは特に長い。

製麺機が改良されたせいかな?
箸を高々と持ち上げても事足りず、
2度ほど立ち上がってしまったヨ。
子どもみたいで恥ずかしいから
中腰にとどめておいたがネ。

あらためて店内を見渡しながらそば湯をすする。
ボーッとしてたら妙なことを思い出した。
もう10年以上も前のことだが
上野のお山の東京文化会館脇にあるカフェで
オペラのプリシアター。

支払いの際にカード類をぶちまけてしまった。
財布を持つ習慣のないJ.C.は
パンツの右の前ポケットに5千円以下の札と小銭。
尻ポケットに数枚の万札。
二つに折りたたんだ札の間に各種カード挟み込む。

それをバラバラとまいたのだ。
すべて回収したつもりが
目の前の滑車付きカウンターの下に
1枚だけ滑り込んだらしい。

翌日、AMEXから当社のカードが上野警察に
届いているのでピックアップせよとの電話。
無事事なきを得て退出する際、
「翁庵」の出前と玄関ですれ違った。
出前板の上には二つの丼がー。

まごうこと無きかつ丼だ。
へえ~ッ、映画みたいなことがsるもんだ。
感心することしきりであった、
ちなみに取調室の定番、かつ丼は森繁の主演映画、
「警察日記」がその始まりとされている。

「翁庵」
 東京都台東区東上野3-39-8
 03-3831-2660

2023年6月2日金曜日

第3288話 みんな大好き ねぎせいろ (その1)

天気予報は雨なのに薄陽の射す昼下がり。
夜の買い物があるため、御徒町へ。
その前に上野でランチだ。

上野警察署のはす向かい、
クラシカルな喫茶店「古城」に着いたら
TV局の撮影とやらで一時閉店。
すぐそばの日本そば「翁庵」に迂回した。
およそ20年ぶりの訪れである。

いつの間にやら食券制が導入されて
女将らしき女性が帳場に独り。
銘柄を確かめた上で黒ラベルの中瓶と
当店きっての人気商品、ねぎせいろを購入。
合わせて1500円のお支払い。

20年前もねぎせいろだったが
なぜそう呼ぶのか、いまだに判らない。
確かに南蛮カット(縦切り)の長ねぎはたっぷり。
でも主役はつゆの真ん中にドボンと
落とし込まれたイカゲソのかき揚げなのだ。
これが南蛮ねぎだけだったら
誰も注文しないだろう。

久しぶりに見る当店のそばは緑がかっていた。
クロレラでも練り込まれているのかな?
見た瞬間に江利チエミのパンチのある、
歌声が聴こえてきた。

♪   雨はふるふる
  城ヶ島の磯に
  利休鼠の
  雨がふる  ♪
  (北原白秋)

千利休がが好んだ利休鼠は
薄っすら緑を帯びた鼠色。
茶の湯の道を究めた達人にいかにもふさわしい。

多くの女性歌手がカバーしている、
「城ヶ島の雨」だが美空ひばりよりも
島倉千代子よりも断然、江利チエミが好き。
彼女の芸域の広さに舌を巻く。

利休鼠をたぐり寄せる。
池之端の行きつけには及ばぬものの、
歯ざわり、のど越し、ともにけっこう。
食べ出しのつゆがしょっぱい。
食べ進むうちに薄まるがネ。

人気のゲソかき揚げは別段、
デキが良いとも思えず、
ごくフツーの美味しさ。
着いたテーブルの真横に2枚の色紙を見とめた。

=つづく=

2023年6月1日木曜日

第3287話 うな丼 何と四種類

わが家の近くには
鰻屋がザッと数えて5軒もある。
当然、すべて制覇したが馴染みではない。
その中で道灌山下の「稲毛屋」だけは
たびたび利用している。
昼にうな丼を食べるよりも
晩にうな串を合いの手に飲むことが多い。

しばらく無沙汰をしちゃったな。
気づいて調べてみたら、その間8年。
シャボン玉ホリデーの植木等じゃないけど
「こりゃまた失礼しましたァ!!
千秋楽を控えた昼に出掛けた。

ドライの中瓶でノドチンコを潤しながら
品書きに目を通す。
おお、そうだった、此処にはうな丼だけで
四種類もあるのだった。

5月末まで中骨を油で揚げた、
骨せんべいサービス期間中。
川魚特有の臭みを感じてあまり好まないが
粉山椒と生醤油の助けを借りて数本かじった。

うな丼・和風うな丼・関西風・白焼き丼。
一律1980円の昼限定サービス価格である。
それほどの違いはないが、それなりにエラい。
和風には焼き海苔とアサツキ。
関西風は蒸しの過程を省いて
言わば焼き魚ライスのうなぎバージョン。

東京ではあまりお目にかからない関西風をお願い。
タレの掛かりの少ないごはんの上に
上半身が横たわっていた。
少食のJ.C.にはうってつけのサイズだ。
粉山椒を振り、シモのほうから箸をつけた。

うっ、うまい・・・というほどではないな。
水準には達しているものの、
年の瀬に食べた墨田区・石原は
「川勇」の2300円に軍配である。

添えられたのは
ワカメの味噌椀と大根の浅漬け。
これが肝吸いと奈良漬、
あるいは山ごぼうだったらなァ・・・
というのは見果てぬ夢、高望みに過ぎない。

肝は無くともせめて吸い物にして欲しい。
値段が値段だから付くだけマシ。
そう言う向きもござろうが
うな丼に味噌汁は無粋の極み。
花のお江戸の食文化が泣く。
おっと、今日のうなぎは関西風でした。

「稲毛屋」
 東京都文京区千駄木3-49-4
 03-3822-3495