2011年8月30日火曜日

第129話 南海に沈没す!(その2)

決戦前には景気づけが肝要である。
笹川の繁蔵の用心棒、あの平手造酒だって
大利根川原に馳せ参じる前には
地獄参りの冷や酒を飲んでいるではないか。

 ♪  義理の  義理の夜風にさらされて 
  月よお前も泣きたかろ 
  こころみだれて 
  抜いたすすきを  奥歯で噛んだ 
  男  男泪の落とし刺し     ♪
              (作詞:猪又良)

今から167年の以前、天保15年8月の喧嘩(でいり)であった。
いや、失礼しました。
どうも自分の世界に入ってしまうと悪ノリしていけない。

麻雀を打つ前の景気づけに一杯飲ろうと、
これまで未踏だった「キッチン南海」、
それも神保町はすずらん通りの本店に来ている。
ところがギッチョン、店内にビールの”ビ”の字もなく、
あきらめてメシを食う覚悟を決めたところである。

おもむろにメニューの吟味に入った。
ふむ、ふむ、料理2品の盛合わせが主力商品であるな・・・。
それも豚肉の生姜焼きとほか1品の組合せが主流だな・・・。
このスタイルは浅草の洋食屋「ぱいち」に酷似しておるな・・・。

結局、豚生姜焼き+1品のメニューから
1品をイカフライにしてもらう。
その際に「ライスは半分で・・・」―
ひとこと付け加えるのを忘れない。
まあこれならボリューム的に大したことなかろう、
そう踏んだのだった。

手持ち無沙汰につき、
ほかの客の食いっぷりを眺めていて妙なことに気がついた。
スタッフを含め、店内にオンナは一人もいない。
そして客の中に小柄な人物、あるいは痩せっぽちは皆無。
みんながみんな揃いも揃ってカロリー過多気味の様子だ。

目の前に運ばれた注文品を見て納得がいった。
半分のハズのライスは他店の大盛り級。
すかさず半分のそのまた半分に減らしてもらう。
そして料理の皿もすさまじかった。
まず主役の豚生姜焼きがどっさり。
相棒のイカフライは大きめのヤツが2本。
ケチャップとマヨネーズで和えた(?)スパゲッティもタップリ。
そして千切りキャベツがこんもり盛られている。

客はみな常連で初訪問者なんていやしない。
こんなのしょっちゅう食ってたら、そりゃ太るわな。
かくして完食にほど遠く、不名誉の撃沈と相成った。
南シナ海ならぬ、南海で沈没の憂き目を見たわけだ。
夢破れて山河あり、障子破れてサンがあり。

そういやあ、東シナ海水深350mに眠っている、
戦艦大和の引上げ計画はいったいどうなったのかな?
こういうハナシはいつの間にか
ウヤムヤになってることが多いからネ。

「キッチン南海本店」
東京都千代田区神田神保町1-5
03-3292-0036