2014年5月2日金曜日

第829話 ”食べ”の駱駝に行きました (その6)

夕焼けだんだんの足元、
トルコ&ペルシャ料理の「ザクロ」でラクダの肉を頬張った。
無言で仲間と顔を見つめ合いながらしばし咀嚼する。
うむむ、かなりの固さである。
肉の部位は判らぬが、どうやらコブではなさそうだ。
想像するに、ももか腰の辺りではあるまいか。

一同、口中のラクダを嚥下してようやく口を開く。
残念ながら旨い!美味しい!の声は一つとして上がらなかった。
ラクダを食したという事実だけを許容し、
それ以上は話題としたがらなかった。

要するにみな口に合わなかったわけだ。
これをもっとじっくり煮込んで甘辛く味付けしたら
缶詰の牛肉や鯨の大和煮みたいになるかもしれない。
予想通り、ハナシの種にしかならなかったラクちゃんであった。

もう終わりかと思いきや、さらに新しい料理がやって来る。
串焼きのケバブはまず牛のハツ。
またしても臓物である。
それと牛だか羊だかのケバブ。
やっと肉らしい肉が出たものの、これもパッとしない。

最後はガツの塩味スープ煮で、またまた臓物だ。
モツ好きのJ.C.でさえ、もう勘弁してくださいヨ、でな感じ。
いったいどういうつもりなのだろうか。

デザートはかき氷状のグラニテ。
興味がないので女性陣の一人に回す。
それよりもありがたかったのは水タバコだ。
中近東ではおなじみのアレである。
回し飲みするため、衛生上の観点からも
各自にマウスピースが配られた。

この水タバコ、アラビア語ではシーシャと呼ばれる。
ちなみにトルコ語ではナルギレ、ペルシャ語ではガリヤーン。
タバコを糖蜜で固めてあるため、
通常の紙タバコにはない独特の甘みがある。
他のメンバーにスモーカーは皆無。
かく言うJ.C.もタバコは吸わないが、
水タバコをこのときばかりと存分に楽しんだ。

そうこうするうち始まったのはベリーダンスだ。
エジプトはカイロ郊外のサハラシティで初めて観たのは1973年。
その後、トルコのイズミールで観たのが1984年。
今宵のダンサーは日本人だから
やはり肉感的には今ひとつ。
店内が少々暗いが、こんな感じ
ダンサーの横に映っているのが店長だかマネージャーだ。
ひょっとしたらオーナーかもしれない。

この人がなかなかの曲者で客の、
殊に女性客の手を取ってダンサーと一緒にダンスを踊らせる。
結局、十数人がフロアの中央に狩り出された。
ラクダとベリーダンス、こうして谷中の夜は更けていったのでした。

=おしまい=

「ザクロ」
 東京都荒川区西日暮里3-13-2
  03-5685-5313