2014年5月6日火曜日

第831話 長崎からも 加賀からも (その2)

神楽坂の日本そば屋「山せみ」に集ったわれら3名。
ところが歓んで生ビールをエンジョイしているのは
われ独りなる体たらく、でもいいですねェ、
心ある友人はそんなわがままを微笑んで許してくれる。

合議の末、いろいろと注文し、分け合っていただくことにする。
気心の知れた仲間との会食はこんなマネができてうれしい。
まず、これは試してみようと
一人前だけお願いしたのは何とかセット。
店側の説明によれば、お食べ得らしい。

手始めにこちらのご紹介。
前菜は三点が別盛りながら可愛い木箱で配された。

そこそこに小ジャレている
それぞれをアップで撮ると
玉子の黄色で
食べ手の視線をとらえ、
海胆を冠した菜花で
季節感を演出する。
お造りでは食べ手に
実存的満足感を与える。

いわゆる和食の王道をゆくスターターだ。
そのぶん、型にはまったマンネリズムが
卓上を席巻してしまうがネ。

三点の中で主役を演ずるお造りをつぶさに拝察してみよう。
白身は平目で間違いないハズだ。
その隣りはカンパチかな?
いや、違う、おそらくワラサであろう。

ワラサは天然のハマチというか、ブリの若いヤツだ。
ブリは出世魚、若い順から成長に伴い、
ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリとなる。
憶測するより店の接客係に訊けばよいのだが
ついついハナシに夢中になり、訊きそびれてしまった。

食味はいずれも特筆に価しない。
ただ、水準には達しており
無難にその役割を果たしている。
相撲用語で例えれば、和食はかように食べ手をいなすのだ。
これがフレンチになるとガップリ四つに組もうとするし、
イタリアンなら立会いから張り手が一つ飛び、
続いて強烈に突っ張ってくるのだ。
洋の東西はかくも異なるべし。

=つづく=