2014年5月7日水曜日

第832話 長崎からも 加賀からも (その3)

神楽坂上に近い「山せみ」での昼めしは話も弾む。
エドゥアール・マネが「草上の昼食」なら
J.C.オカザワとその友人は「坂上の昼食」である。

前菜に続いた天ぷらは海老・いか・茄子・かぼちゃ・しし唐。
ごく、ごく、フツーで、ややおざなりの感否めず。
締めくくりのせいろには
大根おろし、とろろ、つくね入りの鴨汁が添えられた。
しなやかだがコシはいまひとつ
ちょいとゼイタクな趣き
そばは前菜よりよかった。
その証しとして長崎のN藤サンも
加賀のCえチャンもさわやかな笑みをもらしている。

桜海老と新玉ねぎのかき揚げ丼、
かけそばを分け合ってお勘定。
週末の短い昼食のひとときはアッという間に
その終末を迎えたのでした。

ところがどっこい、軽めにとどめおいたのは
もう1軒回る腹積もりでいたからだ。
でもって先刻、長蛇の列であきらめた「蕎楽亭」に舞い戻る。
しかし短くなってはいたものの、またもや行列だ。
どうしてここばかりが人気なのか
ずっと理解できないままでいる。

芸者新道の「和み」、兵庫横丁の「めの惣」とあたったが
なぜかこの日はどこもいっぱいだ。
マイッタなァ、マイッタたぬきは目で判るってか―。

坂上の交差点を越え、甘味処の「花」に行ってみた。
ここには甘味だけではなく、雑煮や冷や麦もあったハズ。
神楽坂の甘味処としては
坂下の「紀の善」があまりにも有名だが
個人的にはこの「花」が好き。
もっとも甘党ではないJ.C.がこの手の店を論評しても
信頼感指数は上がらない。

入口そばの一卓に案内されたものの、ここもほぼ満席。
しかも、女将独りが孤軍奮闘しており、
先客たちの注文品はただ今製作中といった有様だ。
しばしたたずんではみたものの、
奥で頑張っている女将に一声掛けて、至近の「大〆」に回った。

「大〆」は東京における上方鮓の草分け的存在。
そして値付け的には最高級店になるのではなかろうか。

=つづく=

「山せみ」
 東京都新宿区神楽坂5-31
 03-3268-7717