2014年11月14日金曜日

第969話 まぐろづくしの折詰 (その2)

古くは江戸四宿の一つ、千住のデパ地下にいる。
目の前のすし折を買うべきか、買わざるべきか、
 To buy, or not to buy・・・that is the question.
J.C.の心境はほぼハムレットのそれに近かった。

店内を一周して戻ったとき、
まだそこに残っていた折詰は
健気(けなげ)にも俺を待っていてくれたのだろう。

 ♪  霧が流れて むせぶよな波止場
   思い出させてヨー また泣ける
   海を渡って それきり逢えぬ
   昔馴染の こころと心
   帰りくる日を たたそれだけを
   俺は待ってるぜ    ♪
     (作詞:上原賢六)

好きだなァ、裕次郎の「俺は待ってるぜ」。
曲も映画も好きだ。
映画の中の裕次郎は波止場でバーを営みつつ、
海を渡った兄貴の帰りを待っていたが
まぐろづくしのすし折は俺を待っていた。
 ♪ 俺は待たれたぜ ♪

こりゃ買わんわけにゃいかんやろ。
”待っている女”を抱かぬわけにゃいかんやろ。

 ♪  消え残る街灯り 女は待ってる
   肩すぼめ襟を立て 冷たいほら風の中 ♪
           (作詞:山口洋子)

晴れて折詰一つ、マイ・バスケットに投入されました。

 ♪  これで心が 晴れました
   あなたなしで生きることに 決めました
   沖を走る潮の流れ 見つめながら
   南国土佐の 昼下がり   ♪
         (作詞:阿久悠)

この時点で北千住における”北酒場”の線は消えた。

 ♪  北の酒場通りには
   長い髪の女が似合う
   ちょっと お人よしがいい
   くどかれ上手な方がいい ♪
     (作詞:なかにし礼)

てなこって
「大はし」の肉豆腐よ、サヨウナラ。
「永見」の千寿揚げよ、さようなら。

 ♪  さよならあなた 私は帰ります
   風の音が胸をゆする 泣けとばかりに
   ああ津軽海峡・冬景色   ♪
       (作詞:阿久悠)

てなこって
自宅に私は帰ります。

あいや、どうもスンマセン。
何だか今話は「演歌の花道」みたいになっちまいやした。

=つづく=