2017年8月24日木曜日

第1685話 ブレーメンも炎天下 (その4)

神奈川県・元住吉のオズ商店街にいる。
ガス・ステーションを血まなこで探している。
ガスといってもハイオクでもなけりゃレギュラーでもない。
Beer for my throat である。
まずリッター1000円は下るまい。

ほどなく有力候補となり得る店を発見。
天丼チェーンの「てんや」みたいな大衆天ぷら店は
その名を「なぐや」という。
ガラスに貼られた生ビールのポスターに惹かれたのだ。
即入店でよかったけれど、一応、端までチェックしないと
あとでどんな隠し玉に遭遇するか知れたものではない。

商店街が尽きる辺りにうなぎ&焼き鳥を商う店舗あり。
ビールを飲むためにうなぎ屋はないだろうが
つい店先の品書きに見入る。

すると背後から女性の声で呼び掛けられた。
「すいませ~ん、『〇〇水産』にいらした方ですよネ?」
「いや、違いますヨ」
「アッ、すみません、失礼しました」
よくは覚えちゃいないが
作務衣みたいなユニフォームを着込んだ、
若い娘がペコリと頭を下げて走り去ってゆく。

そういやあ、数軒手前に「〇〇水産」があったな。
いったい何が起こったのか?
客の忘れ物か、会計の間違いか、
まさか無銭飲食じゃあるまいヨ。

オズ通りを踏破してもほかに収穫はナシ。
「なぐや」に舞い戻った。
とにもかくにも生ビールである。
カウンター内のアンちゃんが
食券を買ってくれというので券売機に相対すると、
生は生でも金の麦〈樽詰〉というのしかないじゃん。
発泡酒か第三のビールか定かでないが、とにかくその類いだ。
 
今さらヨソに回る元気などないし、
飲んだことがないわけでもない。
そんなに不味くなかった記憶がおぼろげにある。
エビスやプレモルのように
苦手な重厚タイプでないことは確か、素直に券を購入した。

グビ~ッ! ッタハ!
こんな状況下ではおのれの好みもへったくれもありゃしない。
砂漠の砂にしみ入る水の如し。
越後湯沢の銘酒、上善水如なんかメじゃないネ。
金の麦、OK!

=つづく=