2018年11月26日月曜日

第2010話 7席だけのワインバー (その1)

先日、新丸子、目黒と飲み歩いた酌友・Fチャンより、
幡ヶ谷のジャマイカン・カフェに連れてけとのお達し。
ついでに三軒茶屋の三角地帯も案内せよとのこと。
前回は武蔵小杉→溝の口→三軒茶屋という、
スケジュールの大幅な変更を余儀なくされた。

したがって次に飲む際は
溝の口から三軒茶屋のコースで合意したハズなのに
幡ヶ谷をふりだしにせよとのたまう。
まっ、こちらは何処でもいいんだけどネ。

京王新線・幡ヶ谷駅で落ち合い、甲州街道沿いに東へ歩く。
2週前に長期休暇のため、フラれた「C」は幡代交差点前。
店内から灯りがもれていたがカーテンは閉ざされていた。
引き戸を引いて入店すると
驚いた様子のママが、それでも笑顔で迎えてくれる。
ただし、15~18時は中休みだという。

時刻は15時45分。
こりゃ、迷惑はかけられないなァ。
短い会話を交わし、
オッサン二人は速やかに退出した次第なり。

はて、どうしたものかのう。
冷たい生ビールを期待して
水分を控えてきたからノドはカラカラだ。
思いついたのは初台のワインバーである。
以前、ここでも臨時休業の憂き目にあった。
甲州街道の騒音を避け、
玉川水道旧水路緑道を歩いてゆく。

さいわいにして「マチルダ」は開いていた。
ママというのか、マダムと呼ぶのか、
とにかく女主人一人の切盛りである。
30代後半とお見受けした。
たった7席だけの小さなワインバーは
開店間もないため、先客ゼロ。
詰めるように奥の2席へ腰を滑らせた。

「飲みものはワインだけですが、よろしいですか?」―
あまりの一言に茫然自失。
ビールを好まぬ相方は馬耳東風なれど、
当方には強烈な先制パンチである。
いきなりダウンしてすぐには立ち上がれない。
カウント9の声を聞き、どうにかスタンド・アップ。
W杯セネガル戦のGK川島みたいに
両拳を胸の前で揃えてファイティングポーズをとった。

最初は白ワイン。
運ばれ置かれた3本のボトルを投げやりにながめる。
ワインに興味のない相方はボトルなどそっちのけ。
店主の横顔に見とれながら、人の脇腹を突ついて
「好みのタイプだなァ」―鼻の下を伸ばしていやがる。
ふん、勝手にせいや!

=つづく=