ビールとともに突き出しのそば味噌がサーヴされた。
これは燗酒用に取り置き、葉わさびを所望した。
ふむ、辛味は立っているものの、出来合い感否めず。
ちょいと不満が残る。
と言っておきながら、これも出来合いの塩うにを―。
壁に大きく“岡本のうに”の貼り紙。
1瓶4千円くらいだったかな? おみやもOKだ。
J.C.はこれが大好きで、来れば通すの必注品目。
下関市・角島(つのじま)産の生海胆のみを使用し、
まさに極上の塩雲丹と言い切ってよい。
うにに添えられた1片の柚子皮は
相性がよいとは思えず、これも取り置き。
のちのち何かの役に立つだろう。
菊正の上撰を熱めでお願いした。
徳利は小さめ、容量は7~8勺といったところか―。
おまけに酒盃も小さいから手がせわしい。
所要3分でもう1本。
正二合とはいかなくとも、もうちょい大きい徳利が欲しい。
つまみももう1品いっておこう。
ちょいとばかりぜい沢して天種の内容も訊かず注文。
「まつや」のやることに間違いナシと見切った結果だ。
はたして・・・大海老2本、大葉1枚、海苔1枚の構成。
天種と呼ぶより海老天ぷらだネこりゃ、まっ、いいけど。
天種は海老のおかげで食べ出があった。
1本をそばのために残そうと思ったものの、
大葉や海苔の小物ならともかく、
大海老ではどんぶり内が油にまみれてシツッコくなる。
胡麻油が香り立っても重くなることは不可避だ。
よって銚子をさらに1本、2本目の海老と合わせた。
ふと出口のガラス戸越しにオモテを見ると、
いつの間にか雨は雪ではなく、みぞれに変わっていた。
それも横殴りのみぞれである。
何だか最近、風の強い日が続くよなァ。
小徳利とはいえ、明るいうちに3本は飲み過ぎ。
そろそろ締めに掛かろう。
「まつや」のそばはすべて手打ち。
やや不揃いの切り口がかえって風情を増す。
当店では冷たいもり系よりも温かいかけ系が好み。
幾度となく利用した末のことだから
身に舌に染みついている。
かけそばを通し、取り置いた大葉と海苔を浮かべた。
このとき柚子も忘れずに―。
かくして、柚子切り・しそ切り・花巻の三位一体とは
言えないまでも、下手な種物顔負けの
小粋な一杯が完成したわけであります。
「神田まつや」
東京都千代田区神田鍛冶町1-13
03-3251-1556