2021年2月8日月曜日

第2585話 熱燗の ガラスの向こう みぞれ舞い (その2)

ビールとともに突き出しのそば味噌がサーヴされた。

これは燗酒用に取り置き、葉わさびを所望した。

ふむ、辛味は立っているものの、出来合い感否めず。

ちょいと不満が残る。

 

と言っておきながら、これも出来合いの塩うにを―。

壁に大きく“岡本のうに”の貼り紙。

1瓶4千円くらいだったかな? おみやもOKだ。

J.C.はこれが大好きで、来れば通すの必注品目。

下関市・角島(つのじま)産の生海胆のみを使用し、

まさに極上の塩雲丹と言い切ってよい。

 

うにに添えられた1片の柚子皮は

相性がよいとは思えず、これも取り置き。

のちのち何かの役に立つだろう。

 

菊正の上撰を熱めでお願いした。

徳利は小さめ、容量は7~8勺といったところか―。

おまけに酒盃も小さいから手がせわしい。

所要3分でもう1本。

正二合とはいかなくとも、もうちょい大きい徳利が欲しい。

 

つまみももう1品いっておこう。

ちょいとばかりぜい沢して天種の内容も訊かず注文。

「まつや」のやることに間違いナシと見切った結果だ。

はたして・・・大海老2本、大葉1枚、海苔1枚の構成。

天種と呼ぶより海老天ぷらだネこりゃ、まっ、いいけど。

 

天種は海老のおかげで食べ出があった。

1本をそばのために残そうと思ったものの、

大葉や海苔の小物ならともかく、

大海老ではどんぶり内が油にまみれてシツッコくなる。

胡麻油が香り立っても重くなることは不可避だ。

よって銚子をさらに1本、2本目の海老と合わせた。

 

ふと出口のガラス戸越しにオモテを見ると、

いつの間にか雨は雪ではなく、みぞれに変わっていた。

それも横殴りのみぞれである。

何だか最近、風の強い日が続くよなァ。

 

小徳利とはいえ、明るいうちに3本は飲み過ぎ。

そろそろ締めに掛かろう。

「まつや」のそばはすべて手打ち。

やや不揃いの切り口がかえって風情を増す。

 

当店では冷たいもり系よりも温かいかけ系が好み。

幾度となく利用した末のことだから

身に舌に染みついている。

 

かけそばを通し、取り置いた大葉と海苔を浮かべた。

このとき柚子も忘れずに―。

かくして、柚子切り・しそ切り・花巻の三位一体とは

言えないまでも、下手な種物顔負けの

小粋な一杯が完成したわけであります。

 

「神田まつや」

 東京都千代田区神田鍛冶町1-13

 03-3251-1556