尾山台から西へしばらく、隣り町の九品仏に差し掛かる。
浄真寺の参道を進むもお寺は門を閉ざしていた。
冬場だからかコロ助のせいか16時半の閉門だった。
裕次郎の初期作品「乳母車」(‘56年)では
九品仏の駅・町・寺がたっぷりと映される。
境内の大きな石の上で裕次郎が昼寝する間に
お茶目な芦川いづみの悪戯が警察沙汰に発展するのだが・・・。
20年前、初めて浄真寺を訪れたとき、すでに大石は撤去されていた。
駅の反対側、商店街を歩くも尾山台よりずっとさびしい。
自由が丘に到着したが19時には酒類の販売が止まるので
物色する時間なく、街一番の酒場「金田」に直行したが
順番待ちの先客2名でなかなか席が空かない。
パーを作った右手を上げ、スタッフに向かって
「またにするネ」―ガラス戸を引いた。
「お待ちしてます」の声を背中に聞いた、
ような気もしたが空耳だったかもしれない。
店を出ると、はす向かいに焼き鳥「かとりや」があった。
L字カウンターに空席もある。
口八丁手八丁の女将サン、その真ん前に陣取った。
泡が治まるのを待ってグビ~ッ!
ドライのジョッキは(大)に近い(中)で飲み出あり。
串は鳥と豚の二刀流だ。
ハツ・レバ・ナンコツの3種は鳥・豚のどちらも揃う。
鳥ハツ&ねぎまを塩、豚レバをタレで通す。
ねぎま良からず、ハツ、レバまずまず。
ジョッキのお替わりと
豚ばらトマト巻、鳥つくね生ピーマン添えを塩で―。
うん、こんなものかなァ。
山の手の水準には達していても下町には遠く及ばない。
勘定は1980円也。
時刻は18時45分、ダメ元で目の前の「金田」に戻る。
先刻とは打って変わって空きスキだ。
カップル5組にJ.C.を加え、ただいま11人。
ハハハ、TBSのTVドラマが懐かしいネ。
着席と同時に、あとで訊いて判ったことだが
アルバイトのアンちゃんが
「さっきはスイマセンでした」
「いえ、いえ、トンデモない」
このひと言のアル・ナシが飲む酒の味わいを変える。
時間の制約があるため、菊正生貯蔵酒300mlをお願いし、
プリントアウトされた品書きにすばやく目を走らせる。
福井産甘鯛があってキマリ。
カブト焼きと信州蒸し(そば入り)で迷った末、
カブトを択ぶと、品書きに傍線が引かれ、売切れである。
かくも短き滞在に、かくも安き勘定は1970円也。
何度もオジャマしている「金田」でこんなの初めて。
これもみなコロ助のせい、いや、おかげでありましょう。
「かとりや
自由が丘店」
東京都目黒区自由が丘1-12-9
03-3718-5505
「金田」
東京都目黒区自由が丘1-11-4
03-3717-7352