2021年2月17日水曜日

第2592話 かいぼりされた石神井池

大泉通りを東に進んでしばらく、東映通りと交差した。

東上すれば東映東京撮影所があるのだが

鶴田浩二や錦之助が出迎えてくれるハズもないから

無視して直進、石神井公園に到達した。

 

かつて檀一雄邸に居候を決め込んだ坂口安吾が乱心に及び、

カレーライス100人前を近所の食堂に発注する騒動が起こった。

1軒ではとても御しきれず、

共助し合って出前を成し遂げた2軒、

「辰巳軒」と「ほかり食堂」が揃いも揃って健在、慶ぶべし。

 

石神井公園内の石神井池にやって来た。

ややっ、どうした、どうした?

「笑点」で林家たい平が

司会の春風亭昇太にぶつけるセリフ、

「何かあったのかァ!」―これが思い出された。

 

池はすっかり干上がり、水が抜けちゃってるぜ。

まさかTV東京&ロンブー淳の仕業じゃあるまいな。

池畔の案内板により真相が判明した。

水質改善と特定外来種除去のため、

1月中旬の週末にかいぼり(掻い掘り)が敢行された由。

武蔵野市・吉祥寺の井之頭池も同様らしい。

 

奥に隣接する三宝寺池には多少なりとも水が残り、

カルガモのつがい、そして此処でも数羽のオオバンに遭遇。

先日、石神井川と隅田川で見かけた小型の水鳥である。

 

ほとりの石神井城址を散策していてハタと思い当った。

ここは豊島氏の居城だったのだ。

現在の豊島・文京・荒川・足立・北・板橋・練馬区と

広大な領地に権勢をふるった豊島氏である。

 

前述の石神井川うんぬんの際、

豊島区でもないのに“地番は豊島”と書いたが

大事なことをコロリと失念していた。

おのれの不明を恥じるほかはない。

ちなみに石神井城を攻略し、豊島氏を滅ぼしたのは

江戸城を築いた太田道灌である。

 

二つの池をほぼ一めぐりして石神井池南岸にやって来ると

池水が抜け切らないスポットがあり、

集まる鳥に子どもがパン屑を与えていた。

オナガガモ一つがいのほかはみなオオバンで

数えてみたら15羽、またもやオオバンぶるまいだ。

この鳥が都内にその数を増やしているのは間違いない。

 

ふと気になって翌日、不忍池に赴くと。

居たネ、居たネ、居ましたネ。

三つに分かれた池のうち、動物園内の鵜の池は

ただ今閉園中で立ち入れないが蓮池に数羽見とめた。

 

そしてクライマックスはボート池である。

北岸ではキンクロハジロ、ヒドリガモ、

ユリカモメが羽を休めている。

南はオオバン一色、二十数羽の密状態に唖然とした。

何だってこんなに勢力を延ばしてるんだろう。

 

それはそれとして先を急ごう。

石神井川のほとり、桜の並木道を東へ歩いて行きました。