2021年2月9日火曜日

第2586話 盲腸線を歩く (その1)

鉄道路線において本線からピョコンと飛び出した、

短い支線を人体の虫垂になぞらえて盲腸線という。

メトロ千代田線・綾瀬―北綾瀬、

東武伊勢崎線・西新井―西新井大師、

西武池袋線・練馬―豊島園などがそれに当たる。

 

この日はメトロ丸ノ内線の盲腸を終点の方南町から

中野富士見町、中野新橋、中野坂上と

逆歩するつもりで家を出た。

 

去年3月、一酌に及んだ方南銀座は

「やしろ食堂」の店頭におもむいた。

立て看板に多彩なランチメニューがズラリ。

安否を確かめたかっただけだし、

朝食をとって4時間ではまだちょいと早い。

方南通りを東に向かった。

 

進路を北に変えてしばらく善福寺川に突き当たった。

流れに沿い川下へほどなく神田川との合流点に到達。

か細い2本の川幅がまったく同じ。

注ぎ込む角度まで一緒だから見事なYの字を描いている。

 

なおも進むと前方に中野富士見町の駅舎が見えてきた。

この辺りを散策するのは15年ぶり。

検車区の線路とバスの車庫だらけだった記憶がよみがえる。

 

駅そばに行列のできた店を発見。

8人ほどの老若男女が並んでいた。

近づくと「純手打ち だるま」なる、ラーメン屋。

エリアの人気店につき、噂を耳にはさんだことはあった。

取りあえず列の後尾に着き、思いをめぐらせる。

 

そろそろ昼めしもいいな。

ハズレはまずないだろう。

問題は待ち時間だけだ。

この日は故あって時間の浪費を避けなければ―。

(理由は後述)

 

ふと、通りをはさんだ向かいに視線を移すと

イタリアンらしき店舗あり。

一時的に列を離れ、店頭のメニューを確認する。

本日のランチ・パスタは

 

魚介ミンチのオイルソース

塩豚とフレッシュトマトのソース

ひき肉とふきのとうのクリームソース 各1000

カラスミとチーズの黄金カルボナーラ 1500

 

おう、なかなかいいじゃん。

料理人のセンスが伝わってくる。

瞬時にして列に戻る気持ちが失せていた。

 

=つづく=