「亀戸ぎょうざ本店」と同じ並びの「したぢ屋」。
素直そうな娘(こ)にドライの中ジョッキを伝えて
おもむろに壁のオススメに視線を移した。
カツレツ・餃子と継いできたからアッサリいきたい。
赤貝刺し(350円+)、ほうぼう刺し(250円+)に目を奪われる。
此の店、こんなに安かったかな?
どちらも好物だし、値段が値段だけにさしたる量もなかろう。
えゝい面倒だい この辺でノックアウトだい
とやると、裕次郎の「嵐を呼ぶ男」になっちまうので
えゝい面倒だい、両方ともいてまえ! てなもんや三度笠。
すると・・・赤貝はそこそこのポーション。
ほうぼうに至っては厚いのが6切れもあるじゃないか―。
正直言って、おそれおののきやしたネ。
両手で小さな輪を作りながら、例の娘に言いつけた。
「こんくらいで、ちょっと深めの容れ物くれる?」
同時に白鶴上撰生貯蔵酒の冷めたいヤツを発注。
届いた冷酒と卓上の生醤油を同割りにし、
ほうぼうを即席のづけに漬けこんだ。
1切れが大きいため、箸をナイフ&フォークのように操り、
それぞれを二分してみたが
これは不作法につき、マネはなさらないでください。
安かろう、悪かろうなんてことはまったくなく、
じゅうぶんに満足のいく魚貝たちだった。
同じ酒に漬けたのだ、白鶴とほうぼうが合わないわけもナシ。
願わくば、生酢と砂糖をもらい、甘酢に調合し、
赤貝をサッとくぐらせたいところながら
紅顔の美少年、じゃなかった、
抗癌の美中年、またまた間違えた、
厚顔の美高年もそこまでのわがままは通せやしない。
「したぢ屋」のもう一つのウリは焼きとん。
オススメにハツモトがあり、
これは焼き鳥であることを確かめたうえで
とんレバー(80円+)、とりハツモト(80円+)を1本づつ、
どちらもタレでお願いした。
ここで飲みものを中ジョッキに戻す。
焼き串はともに下町の水準をクリアして
とりわけハツモトがよかった。
小ぶりとはいえ、10個の餃子を平らげたあと、
すでに満腹となる。
接客の娘は、男らしさにしびれちゃうほど
恋路の場数を踏んじゃいないだろうが
こんな亀戸の夜もアリでござんしょう。
「したぢ屋」
東京都江東区亀戸5-16-5
03-5875-4995