2022年7月19日火曜日

第3061話 雨宿り あんかけ焼きそば 神保町 (その2)

神田神保町はすずらん通りの出口そば。
「三幸園」の2階でビールを飲んでいる。
天井の空調が強烈で涼しいのはありがたいが
けっこうな風力だ。

待つあいだ、壁の短冊を遠望する。
豚肉キムチ炒め、冷やしジャージャ麺、
ニラそばがこの季節の推奨料理らしい。

あんかけ焼きそばが運ばれ来た。
一見してちょいとヤな予感。
皿のてっぺんに三種の神器よろしく、
小海老・モンゴイカ・うず玉。
見るからにアト乗せであんかけに馴染んでいない。

よく海老炒飯や蟹炒飯で海老・蟹を一緒に炒めず、
最後にチョコンと乗せるタイプがあるが
あれはいただけない。
素材は火を通されて初めて香り立つものなのだ。

ぬるかったら、いや、冷たかったら
目も当てられないヨと思いつつ、
飾り包丁の入ったモンゴをパクリとやると
それなりに温かかった。

具材はほかに豚肉薄切り、ピーマン、キャベツ、
ニンジン、長ねぎ、竹の子、キクラゲ。
脇にたっぷりの練り辛子。
やや太めの麺はところどころに
焦げ目が欲しいところではあった。

ありゃ、空調の風で伝票がヒラヒラ飛んで床に着地。
たまたま通りかかった、くだんの陽気なオバちゃん。
拾い上げてくれ、曰く
「こういうのはどっかに飛ばしちゃえばいいのよネ」
「そうだネ、何ならあっちのテーブルに置いといて」
「エッ、あっち? そりゃ可哀そうだヨ」
「ハハ、そりゃ、そうだ」

空調のせいで焼きそばがどんどん冷めてゆく。
熱々スープの湯麺ならまだしも
汁っ気に乏しい炒麺は冷え足が速い。
最後のほうはぬるいというより冷たくなってた。

そうだよなァ。
房総や瀬戸内は暖かいけど、
モンゴルみたいな奥地は寒いからねェ。
海洋性気候は温暖 内陸性は寒冷。 
まさか中華料理屋で地理のおさらいとは
思いもよらぬことでした。

「三幸園」
 東京都千代田区神田神保町1-13
 03-3291-8186