2023年12月29日金曜日

第3438話 師走の吉原 ぶ~らぶら (その2)

焼きそばは中濃ソースの味が濃い。
でも、昔のソース焼きそばってこうだった。
中太ストレートの麺に青海苔が掛かっている。
1050円を支払いながらオネバさんと談笑。
さっきのオジさんは店主じゃなくて雇われ人。
オネバさんが経営者で
7年前に亡くなった先代の娘がこの人。

「隣りの『ニューダイカマ』は今日お休み」
「いえ、そうじゃないんです。
 1年前に叔父が亡くなり、息子はいますが
 後を継ぐのが嫌だって、結局、閉めました」
ふ~ん、そうでありましたかー。

さっき歩いて来た道筋を戻り、
見返り柳を抜けて吉原の本丸に入城した。
おや? こんな中国料理屋あったかな?
「蜀食成都」なる四川料理専門店だ。
店頭のメニューに強く惹かれるものがあった。
マコモダケである。
とたんに裕次郎が歌い出す。

♪ 真菰(まこも)の葦は 風にゆれ
  落葉くるくる 水に舞う
  この世の秋の あわれさを
  しみじみ胸に バスは行く ♪
   (作詞:萩原四朗)

「夕陽の丘」は1963年のリリース。
浅丘ルリ子とのデュエット曲である。
作曲が上原賢六で、荻原・上原・石原の勢揃い。
よってチャンバラトリオならぬ、
三原(さんばら)トリオと呼ばれている。

マコモダケはマコモ茸と誤記されることがあり、
キノコの一種と誤解されるが正しくは真菰筍。
肥大化した茎を食べ、種子はワイルドライスとして
アメリカ・インディアンには重要な穀物だ。

豚肉とマコモダケの炒めでビールを飲もう。
出て来た小姐に所望すると、彼女曰く、
「料理は全部あるあるがマコモダケだけないあるヨ」
それはないぜ、セニョリータ!
今さら出てゆくわけにもいかず、
カキの鉄板焼きで妥協した。

アハハ、これにはマコモダケならぬ、
フクロダケ(袋茸)が入ってるヨ。
あとはマッシュルーム、玉ねぎ、ピーマン、
ニンジン、タケノコ、ヤングコーン。
四川なのに唐辛子や花椒が主張するでもなく、
味付けはもっぱらオイスターソースだ。
ぷっくり太った5粒のカキが旨い。
とりあえず溜飲を下げた。

ソープ街のど真ん中を独歩する。
店頭のオニイさんに会釈されたり、声掛けされたり。
「ボジョレ・ヌーボー」なんて店もあった。
ワインバーじゃあるまいし、笑かすねェ。
観音裏辺りでもう1軒寄って帰るとするかなァ。

それでは皆さん、元旦にまたお会いしましょう。
どうぞ、良い新年をお迎えください。

「大釜(だいかま)本店」
 東京都台東区清川1-29-5
 03-3872-0103
 
「蜀食成都(しょくしょくせいと)」
 東京都台東区千束4-31-2
 03-4361-9982