2023年12月28日木曜日

第3437話 師走の吉原 ぶ~らぶら (その1)

歳の瀬になると、浅草が恋しくなる。
インバウンドが戻って来て
観音さまの周りはだいぶ歩きにくくなったけど
この街とは旧知の仲だからネ。
今から半世紀前、寂れに寂れた時期が懐かしい。
あの頃の浅草をもう一度歩きたい。

上野松坂屋から乗った南千住行きのバスを
浅草の奥座敷、吉原大門で降りた。
大門は”おおもん”と訓ずる。
増上寺のある芝大門は”だいもん”と音読みだ。
これは聖と俗を一緒くたにできないためである。

大門入口に今にも朽ち果てそうな見返り柳。
足元の説明書きによると、
京都は島原遊郭門口の柳を模したもので
遊び帰りの客がこの辺りで後ろ髪を引かれ、
遊郭を振り返ったことから見返り柳と呼ばれる。

遊郭はソープランドに生まれ変わった。
一年の垢を洗い流してゆこうかー。
いや、若い娘に身体を
洗ってもらう習慣はないからやめておこう。

こう見えても若いうちはそこそこ遊んだ。
殊に海外ではネ。
女性を抱くこと自体より、
哀愁漂う街角を歩くのが好きだ。

J.C.の知る限り、ワールド・ベストは
トルコのイスタンブール。
セカンド・ベストはエチオピアのアディスアベバ。
逆に味も素っ気もないのはドイツのハンブルグ。
その点、運河があるため、
オランダのアムステルダムには情緒がある。

ソープ街とは反対側の日の出商店街を往く。
吉野通りを渡り、アサヒ会通りをさらに真っ直ぐ。
そこら中にシャッターが降りて
開いてる店はほとんどない。

あれ、目指したカレーの「ニューダイカマ」も休み。
辛くも隣りの「大釜本店」が営業中。
カレーが焼きそばに変わるけど入店した。
まだ食べていないラーメンに誘われつつも
久々なのでやはり焼きそばにしよう。

目玉入りや豚バラ入りもあるなか、
一番シンプルな焼きそば(500円)を
ドライの中瓶(550円)とともに
店主らしきオジさんにお願いした。
中濃ソースたっぷりに具材はキャベツともやし。
肉はただの一片も入っていない。
オジさん奥に消えてオネバさんが厨房に入った。

=つづく=