2016年11月9日水曜日

第1487話 うな重だけではもったいない (その6)

肝わさをもってうなぎの稀少部位はおしまい。
あとは締めにうな重ならぬ、うな丼をいただけばよろしい。
しかし、今しばらく酒を酌み交わしていたい。
佐藤 黒のお替わりをしておいて軽いつまみを物色し始めた。

ここでは”軽さ”が大事で重い料理を頼んだひにゃ、
うな丼の味を損なうことはなはだしい。
本来、うなぎ屋に行ったらば上質のお新香、
いわゆる上新香で一杯飲りながら
うなぎの焼き上がりを待つというのが手筋なのだ。

ここで九条ねぎのぬたをお願いする。
もともと、ぬたは好まなかった。
殊にイカやマグロを使ったのは敬遠してきた。
そりゃ、イカ納豆やマグロ納豆よりはマシだがネ。

あるとき、あるウチに呼ばれ、
料理自慢を自称する奥方の手料理をいただく機会に恵まれた。
機会に恵まれた・・・そう書いてはみたものの、
”破目に陥った”というのが素直、かつ適切な心模様である。
わが半生を振り返ると、料理自慢の女性の料理によって
シアワセを感じたことは数えるほどしかない。

その夜も最初に出て来たアジのたたきに翻弄される。
あちこちで何度も触れているから読者はご存じだろうが
どんなに新鮮であっても生の青背はキラい。
アジ・イワシ・サンマ・サバ・ニシン、
生食の場合は必ず酢を必要とする。
大好物のコハダにしたって
酢と塩による一仕事がなければ、けしてノドを通ることはない。

アジたたきの先制攻撃を食らい、第一ラウンドからKO寸前。
何か理由を見つけて退散しようと思ったくらいなのだ。
とにかくアジの下に敷かれた大葉の助けを借りてどうにかやっつけた。
やっつけた・・・そう書いたが”駆除した”というのがより正しい。

そして2皿目。
登場したのはあんかけ豆腐。
温めた絹ごし豆腐に熱々にしてカラフルなあんが掛かっている。
カラフルなわけだヨ、具材にカニカマとコーンが使われていた。
高価なズワイの脚肉にしておくれとは言わないけれど、
カニカマかい?
お先真っ暗でありました。

続いて3品目。
小鉢に盛られて運ばれたのは、ぬたであった。
前述したようにぬたは好きではない。
次から次とよくもまあ、ハズしてくれるものよのぉ。
おお、神よ、われを救いたまえ!

=つづく=