2020年3月11日水曜日

第2347話 チャーハンは二度と帰らず

つい先日、JR鴬谷北口改札にたたずんだ際、
目の前の町中華「大弘軒」が
あのチャーハンを復活させたことに気づいた。
過去10年に食した中でベストのチャーハンである。

 数日後の昼下がり。
いつものようにカウンターに着座した。
最初に視線を向けたのはむろん、新しい料理人だ。
以前のお二方より若返っている。
髪に白いものが混じっていても遠目には黒が優勢。
中華鍋の煽りも堂に入っていた。

たかだか5分で清湯を従えたチャーハン登場。
ん? んんん?
ロゼッタ洗顔パスタ(古いなァ)の漫画広告における、
白子さんと黒子さんじゃないが
以前のチャーハンは白子、此度は黒子じゃん!
ちなみに今でも販売されているのか調べたら
ロゼッタがロゼットに改名されて存命だった。

それはそれとして、こりゃどう見たって醤油の色だヨ。
当然、味のほうも想定した通り。
心なしか清湯まで味オチした感がある。
いや、このチャーハンだって
じゅうぶん水準に達してはいるけれど、
何せ以前が以前だから
その落差は大きく、ガックシ肩を落とすJ.C.であった。

ならば今一つの気に入り、五目そばはいかばかりか?
こちらはずっとメニューに残っていたが
作り手変われば味変わる。
見た目も変貌を遂げているやも知れぬ。
気になって再び翌週、参上に及んだ。

すると・・・いや、驚いたネ。
具材がずいぶん増えていた。
あらら、竹輪なんか入ってなかったゾ。
とにかく練り物だけでも竹輪のほか、
ナルト、かまぼこ、さつま揚げ、伊達巻と計5種類。
おでん屋も真っ青である。

バラ肉チャーシューが厚さを増している。
心持ち、化調の強まりを感じたが気のせいかもしれない。
どんぶりを彩るパステルカラーは依然、
渋野日向子のポロシャツを思わせて可愛らしい。

餃子はなかなかだし、1皿50円のザーサイも健在。
「大弘軒」は晩酌利用に耐えうる佳店なのだ。
訪問機会の減少は避けられないが
今後は昼めしどきなら五目そば、
夕暮れ以降はちょい飲みといこう。

どんなに名残りを惜しんでも
あのチャーハンは二度と帰らず。
わが青春に等しきものなり。

「大弘軒」
 東京都台東区根岸1-7-11
 03-3875-6493