2020年5月5日火曜日

第2386話 思い出すのは1971年 (その2)

26年前に初めて訪れた横浜ラー博。
しょっちゅうは来れないから
頑張って3軒もハシゴした。
横浜「六角家」、熊本「こむらさき」、
東京「勝丸」のうち、気に染まったのは「勝丸」だ。

一時は飛ぶ鳥を落とす勢いで
支店展開した「勝丸」だったが
訪れたのは後にも先にもこの1回こっきり。
今では唯一目黒に残った本拠地の暖簾を潜れば
四半世紀ぶりの再訪となる。

店先にやって来ると、やはり開いていた。
本当にラーメン屋はコロナに強いや。
”営業中”の木札にそっと寄り添う、
ベティちゃんのフィギュアに迎えられ、敷居をまたいだ。
ちなみにベティちゃんこと、
ベティ・ブープは今年、生誕90年を迎える。

苦手な券売機を前に迷う。
シンプルな正油らーめん(740円)のつもりでいたが
昭和の中華そば、屋台物語と銘打たれた、
2品(各790円)に惹かれた。
そういえば以前、ラー博卒業記念として
屋台物語が創作された逸話を耳にはさんだ記憶がある。

右手の中指がポチッたのは”2品”。
いや、両方食べるんじゃなく兼用チケットで
注文の際にどちらかを指定するスタイル。
ここは屋台物語をお願いした。

店内に流れるBGMはベンチャーズ。
古いラジオやオープンリール、
福助人形に赤電話などが所せまし。
壁には東映時代劇のポスターと、
まるでプチ・ラー博の様相を呈している。

屋台物語の醤油スープはかなり色が濃い。
一口すすると、見た目通りにしょっぱい。
クセというか、イヤなエグみも感じた。
もも肉チャーシューはパサパサ。
硬めのシナチクは歯ざわりよし。
法蓮草がたっぷりで、エグみの元はこれだった。
ほかははナルト、海苔、小ねぎとクラシック。

平打ち中太ちぢれ麺は噛み締めると、
歯から逃がれようとするタイプで好みじゃない。
26年前とはまったくの別物と化している。
もっともあのときは正油らーめんだったがネ。

「勝丸」はラーメン好きのタクシー・ドライバーが
屋台から始めた店で、1971年のことだという
J.C.にとって1971年はエポックメーキング・イヤー。
人生で最も重要な1年と言い切れる。

横浜港から初めて国外に出たのが3月末。
5月の今頃はひたすらパリの街中を歩き回る日々。
当時のパリはまぶしいほどに光り輝いていた。
それは青春の思い出が
美しいせいばかりではけっしてない。

=つづく=