霊岸橋で亀島川を渡り、新川へ。
2ヶ月前に復刻版・つたカレーを食べた、
「ラティーノ」のある町だ。
コンビニでロング缶を買い、亀島川へ戻り、
高橋(たかばし)のたもとから河岸テラスに降りた。
ベンチに腰掛けてプシュ。
下流の南高橋を眺めながらノド元へ送り込む。
以前を言やあ、東京随一の水景も
背後の佃島に余計な高層ビルが建ちすぎた。
そこを差し引いても都内屈指の景色が広がっている。
5mほど先にハトが舞い降りた。
つがいかどうかは判らんが一応ペアで仲がいい。
おやおや、ラブシーンが始まったゾ。
あらあら、ラブ・メイキングとまでいかずとも
キスシーンは展開されている。
ロングを飲み干し、残るしずくを切るため、
足元に二度三度、空き缶を振った瞬間、いや、驚いた。
2羽が足早に駆け寄って、ほとんどハトまっしぐら。
エサがまかれたものと勘違いしたらしい。
悪いな、食いモンはないんだヨ。
さっき残したライスを包んでくりゃよかった。
空振りだったのに2羽は離れず、
足下で小砂利の地面を突ついている。
目を凝らすとアリがちょこちょこ往来する。
しばらく見守っていたがハトはアリを食わないんだネ。
ツバメやスズメは食うかもしれないな。
ダッシュして来るくらいだからオマエたち、
腹を空かしてるんだろ、どうして食わへんの?
オス・メスの区別はつかないけれど、
たぶんオスのヤツがジッと見上げている。
何か、つぶやいたような気がした。
「ん? 何だって?」
「わたしらハトはマメクイではありますが
けしてアリクイではございません」
いや、ごもっとも
近頃のハトはエラいねェ、しっかり理屈を通すもの。
田村・珠代・竹中のドアホ・トリオなんざ足元にも及ばん。
ちゃんとビジョンを持ってるもんなァ。
「いえ、わたしらはピジョンです」―ハイ、そうでした。
八丁堀から京橋へ歩く道すがら、ぼんやり思っていた。
帰宅したらグルベローヴァでも聴こうかな。
彼女の「清教徒」が観たくって
ウイーンを訪ねたのは四半世紀も前のこと。
そのときはシュニッツレルではなく、
ホテル・ザッハーでザッハトルテを食べたっけ。
いや待てヨ、やはり映像がほしい。
ウイーンを舞台にした映画がいいな。
よし、いつものTSUTAYAに寄って帰ろう。