2023年4月7日金曜日

第3248話 雅子の白い顔 浮かんで

文教の都、文京区の 東大農学部から
千石に抜けてゆく旧白山通り。
この道筋に「玄奘(げんじょう)」なる、
中華料理屋があるのは前から知っていた。
本格派ではないフツーの町中華だ。

利用した試しがないのは通りすがるたびに
客がまったく入っていないため。
この日は白山上に用事があり、帰りに立ち寄った。

ガラス越しにのぞくと案の定、先客ナシ。
いや、一番奥に女性が独り。
珍しいことがあるもんだ。
でも時刻は正午を回ったところ。
ランチタイムど真ん中に一人はまずいやろ。

二人目になってやろうと入店。
すると先客が歩み寄って来た。
何だ、なんだ、逆ナンパかァ?
近頃の娘は積極的だからなァ。

あん? あらら、早とちりだったヨ。
何のこたあない、お運びのオネエじゃんかー。
客がいなくとも立ってなさいっての。
拍子抜けしながらも
一番搾りの中グラスを通し、品定め。
いえ、娘じゃなくて食事のです。

おっ、ミニラーメンとミニチャーハンが
揃ってるじゃないか。
少食派にはうってつけのコンビだ。
オネエに
「ミニとミニってありかな?」
「ダイジョウブです」
ちゃんとした日本語は
アチラ系ではなくコチラ系。
このコは正真正銘の国産だ。

ミニラーは中太の激しいちぢれ麺。
固ゆでだからバッツンバッツンの食感。
醤油スープはいささかも化調を感じさせない。
厚く大きいバラ肉チャーシューに
シナチクとワカメが浮き沈み。

ミニチャーにはチャーシュー・玉子・長ねぎ。
真っ赤な紅しょうがは余計だが
食べなきゃいいだけのこと。
これでミニかい?と思わせるほどの量だ。
頑張ってはみたものの、少しだけ残した。

さて、この玄奘は
「西遊記」でおなじみの三蔵法師のことだが
三蔵法師は普通名詞で、ほかにもたくさんいる。
固有名詞の玄奘三蔵が正式名称だ。

けれども子どもに親しまれる「西遊記」で
玄奘三蔵じゃ、いかんせんとっつきにくい。
あれほど人気にはならなかったろう。

食事後、天井を見上げてたら
孫悟空のマチャアキとともに
夏目雅子の白い美顔がまぶたに浮かんだ。

目の前のオネエもよくよく見りゃ、
なかなかの美形だ。
また、来るとしますかの?

「玄奘」
 東京都文京区白山1-25-13
 03-3812-4965