その北側と南側を入念に歩き回った。
ないネ、ございませんな、飲む処が。
まだ15時半、早い店でも17時開店だ。
策を練りながら
この町に来ると、必ず立ち寄る「Y's Mart」へ。
オージービーフのカイノミを買い込んだ。
肉割れした肉質が好きで今宵は
ガーリックステーキを焼こう。
ガルニは昨日のうちに
近所の八百屋で絹さやを買ってある。
いたずらに時を費やしても仕方がない。
小田急線で新宿にまっしぐら。
西口の「ベルク(丘)」に一目散。
梅ヶ丘から丘そのものに移動した。
立て込んでるわりに椅子席にありつけた。
2万歩も歩けば健脚家もさすがに疲れる。
黒ラベル生の大グラスをグイ~ッ!
いやはや、真っ当なビールがたまりません。
まぶたを閉じてしばし今日の日を振り返る。
すかさずお替わり。
並んで順番を待つんだが、この店の難点は
飲むより並んでる時間のほうが長いこと。
隣りの席のオッサンが退店してすぐに
若者二人が着席。
片割れはデカい外人でデカい荷物を抱えている。
ほどなく言葉を交わし始めた。
二人の勤務先はスイスの時計メーカー、オメガ。
日本に従業員が400人もいるんだそうだ。
外人はドイツ語圏スイス人で出張中だと言う。
何でも9日間のお遍路を終えて
さっき羽田に着いたそう。
スイスの首都・ベルンの出身&在住とのことで
若い頃、ベルンに行ったことがあると言ったら
奴さん、俄然乗って来た・
実はJ.C.、ベルンには素敵な思い出があるんだ。
あれは1971年4月下旬、丸52年前のこと。
イタリア周遊を終え、ミラノからベルン入り。
車中、コンパートメントに同席した、
スイス人ビジネスマンと会話をし続け、中央駅着。
「この道をこう行ってあそこで曲がって・・・」
ユースホステルへの道順を教わっていると
一組の母娘が通りすがった。
「ユースでしょ? いいわ、私たちが連れてくわ」
J.C.の身柄は彼から彼女らに託された。
途中、親子の家のそばに来て
「あとは頼むわネ」ー小学1年くらいのコに。
そこから数分、ホステルのゲートに到着。
娘の肩に手を置いて「ダンケ・シェーン!」
彼女ニッコリ微笑んで「サヨナラ~!」
ギョ、ギョ、どうしてこんな小さなコが日本語を?
胸にジンと来て目頭が熱くなったのでした。
スイスはベルンの忘れ得ぬ思い出。
「ベルク」
東京都新宿区新宿3-38-1ルミネエストB1
03-3226-1288