2023年5月15日月曜日

第3274話 昭和の味の もやしあんかけ

66年前(昭和32年)の夢を見た。
家族揃って上京し、
母親の兄夫婦宅に転がり込んだ頃。
ところは板橋区・中板橋だ。

ある夜、6人で食卓を囲んでいた。
献立はもやしあんかけ焼きそば。
最近はトンと見かけないが
さつま芋をふかすための胴長鍋が
ちゃぶ台の脇にあった。

ふかし鍋というんだろうか?
アレでもって焼きそばを温め、
たっぷりのもやしに豚小間入りのあんを掛けたヤツ。
大人も子どもも大好きだった。

箸を取ったところで目が覚めた。
食いモンの夢はいつもこうなんだ。
その夢を見たもんだから無性に食べたくなり、
いや、探した、探した。
なかなか見つからなかったが、とうとう探り当てたゾ。
団地の町、江東区・東大島の「龍山」である。

人気(ひとけ)のない道を歩いて到着。
真っ赤なパーティションが中華屋らしい。
ん? ソース焼きそばを筆頭に
焼きそばだけで10種類もあるゾ。
オススメは麻婆焼きそばだとー。
食いたくないなァ。

接客はすっかり腰の曲がったお婆ちゃん。
頑張るなァ、元気だねェ。
心に決めたもやしあんかけ焼きそばと
ドライの中ジョッキをお願いした。

あんかけはいい塩梅だ。
もやし主体の野菜オンリーで肉はまったくナシ。
焦げ目混じりの中細ちぢれ麺は
昔食べたふかし麺とは違う。

酢と辛子で美味しくいただいた。
中ジョッキ2杯と合わせ、支払いは1900円。
ドリーム・カム・トゥルー。
夢がかない、幸せな気分で「龍山」をあとにした。

飲み直しはいつものようにアメ横。
都営新宿線を岩本町で降りた。
秋葉原を縦断して往くとものすごい人出。
どこから湧き出したものか、外国人率が高い。

人ゴミを、じゃなかった、人混みを
かき分けかき分け末広町の交差点まで来たが
メイドカフェの立ちん坊はまだ何人もー。
トンデモないコが一人いて掲げるカードに
ひざまくら・耳かき
と来たもんだ。
噂にゃ聞いてはいたがホントにやるんだネ。

そもそも耳かきなんて母親が可愛いわが子に
あるいは新妻が愛する夫にしてやるモンだぜ。
その新妻でさえ、婆さんになったら
もう爺さんの夫にしてやらなくなるヨ。
いわゆる拒否権発動だ。

そんな孤独な爺さんに秋葉原の耳かきを推めたい。
孫娘みたいな若いコのひざに白髪頭を預けて
幸せいっぱい、夢いっぱい。
世の人はこれをメイドのみやげと言う。

「龍山」
 東京都江東区大島8-30-8
 03-3682-3497