近頃とみにお世話になっている神保町シアター。
小津安二郎の生誕120年及び、
没後60年記念の特集はすべて白黒映画。
無声の「東京の女」に始まり、「晩春」、
「お茶漬けの味」、「彼女は何を忘れたか」、
「麦秋」、「早春」、「戸田家の兄妹」、
「東京暮色」と計8本も観た。
ほとんどが既観ながら存分に楽しめた。
8本のうちよかった3本は
「晩春」、「麦秋」、「東京暮色」。
「東京暮色」は昔からずっとマイ・ベストだ。
おそらく小津作品ではもっとも暗く、
陰湿でさえあるけれど、好きである。
主役を演ずる有馬稲子のファンだしネ。
小津映画に初めて原節子が登場した、
「晩春」(1949)は心に染み入った。
「麦秋」(’51)、「東京物語」(’53)と合わせ、
”紀子(節子の役柄)三部作”と呼ばれるが
あらためて大きな(でもないけど)スクリーンで
観直して彼女の存在感を実感し、圧倒されもした。
ああそうか、そういうことかー。
小津が彼女を重用した理由が判った。
加えて小津映画に目覚めた気すらしてきた。
自分が若い頃には気づかなかった、
原節子という女優の魅力に触れたのだ。
小津作品のエースで四番は杉村春子。
よく指摘されるけど本当にそうだ。
どこにでも居そうなオバちゃんなんて言われるが
実際あんなオバちゃんはどこにも居ないんだ。
トレードマークの”せかせか小走り”を
心ゆくまで楽しませてもらった。
かつて高峰秀子に「彼女は背中で演技する」と
言わしめ、嫉妬までさせた。
演技力では日本映画史上最高の女優だろう。
もう一人の脇役、浦辺粂子も素晴らしい。
あの声音とセリフ回しは天が授けたものである。
杉村&浦辺抜きで小津を語ることはできまい。
先々週の朝日新聞土曜版、「be 」のアンケート。
”100人に聞きました” みたいなコラムだが
小津と黒澤、どっちが観たい? では
小津 47 vs 黒沢 53 という結果。
どっちも観たい、そんなの決められん、
そんな読者がかなりの数に上ったという。
かく言うJ.C.もまさしくその通り。
最後に二人ののマイ・ベスト3を公表します。
=小津安二郎=
① 東京暮色 ② 晩春 ③ 秋刀魚の味
=黒澤明=
① 椿三十郎 ② 用心棒 ③ 赤ひげ
機会がございましたら、ぜひご覧くださいまし。