2024年1月29日月曜日

第3459話 初めて小津に目覚めた気もする

近頃とみにお世話になっている神保町シアター。
小津安二郎の生誕120年及び、
没後60年記念の特集はすべて白黒映画。
無声の「東京の女」に始まり、「晩春」、
「お茶漬けの味」、「彼女は何を忘れたか」、
「麦秋」、「早春」、「戸田家の兄妹」、
「東京暮色」と計8本も観た。

ほとんどが既観ながら存分に楽しめた。
8本のうちよかった3本は
「晩春」、「麦秋」、「東京暮色」。
「東京暮色」は昔からずっとマイ・ベストだ。
おそらく小津作品ではもっとも暗く、
陰湿でさえあるけれど、好きである。
主役を演ずる有馬稲子のファンだしネ。

小津映画に初めて原節子が登場した、
「晩春」(1949)は心に染み入った。
「麦秋」(’51)、「東京物語」(’53)と合わせ、
”紀子(節子の役柄)三部作”と呼ばれるが
あらためて大きな(でもないけど)スクリーンで
観直して彼女の存在感を実感し、圧倒されもした。

ああそうか、そういうことかー。
小津が彼女を重用した理由が判った。
加えて小津映画に目覚めた気すらしてきた。
自分が若い頃には気づかなかった、
原節子という女優の魅力に触れたのだ。

小津作品のエースで四番は杉村春子。
よく指摘されるけど本当にそうだ。
どこにでも居そうなオバちゃんなんて言われるが
実際あんなオバちゃんはどこにも居ないんだ。
トレードマークの”せかせか小走り”を
心ゆくまで楽しませてもらった。

かつて高峰秀子に「彼女は背中で演技する」と
言わしめ、嫉妬までさせた。
演技力では日本映画史上最高の女優だろう。
もう一人の脇役、浦辺粂子も素晴らしい。
あの声音とセリフ回しは天が授けたものである。
杉村&浦辺抜きで小津を語ることはできまい。

先々週の朝日新聞土曜版、「be 」のアンケート。
”100人に聞きました” みたいなコラムだが
小津と黒澤、どっちが観たい? では
小津 47 vs 黒沢 53 という結果。
どっちも観たい、そんなの決められん、
そんな読者がかなりの数に上ったという。
かく言うJ.C.もまさしくその通り。
最後に二人ののマイ・ベスト3を公表します。

=小津安二郎=
① 東京暮色 ② 晩春 ③ 秋刀魚の味

=黒澤明=
① 椿三十郎 ② 用心棒 ③ 赤ひげ

機会がございましたら、ぜひご覧くださいまし。