2024年1月3日水曜日

第3441話 年の瀬の 築地と銀座を ハシゴする (その3)

銀座並木通りの昼下がり、時刻は14時半。
「三州屋」のガラス戸をガラリと引いた。
女性スタッフがカウンターの先客を
左右にスクイーズしてくれ、席を作ってくれる。
お隣りに軽く会釈して滑り込んだ。

サッポロ黒ラベル大瓶を通し、
何気なく店内の冷蔵庫を振り返ったら
スーパードライとクラシックラガーが見えた。
「三州屋」はどこでもビールがサッポロ、
清酒は白鶴と決まっているんだ。
早く言ってヨ。とも思ったが
黒ラベルなら異存はない。

左隣りの若いOLサンはカキフライ定食。
右のオバちゃんは、いや、J.C.より年カサだから
オバアちゃんと呼ばせてもらうかー。
同じ黒ラベルの大瓶を飲んでいる。
お通しはひじきと大豆の煮たの。
彼女にもすぐにカキフライ定食が着卓した。

当方は一呼吸おいて皮はぎの刺身を通す。
店内に順番待ちの客が数人でき始めている。
昼食派と昼飲み派が五分と五分の光景が広がる。
隣りとの間隔は狭く、片身の狭い思いをしても
此処へ来ると、なぜか落ち着く。

左隣りのOLがJ.C.に頭を下げて退店。
若いのによくできたコじゃないかー。
うん、キミはいいお嫁さんになれるヨ。
貰い手がなかったら、いつでもいらっしゃい。
タハッ、この年末にオマエはバカか!

彼女のあとに四十がらみのリーマン風が座り、
エビスの大瓶を注文。
なんだ、エビスまで揃ってんのかー。
この御仁のオーダーを聞くともなしに聞く。

いや、驚いたネ。
J.C.と同じ皮はぎの刺身には
フフフ、こやつなかなかデキるな。
ところがいっぺんに
イカ納豆、まぐろブツ、カキフライまで通した。
アンタ、そんなに食えるんかい?
無謀だなァ。

皮はぎ刺しは肝付き。
これこそこのサカナの魅力である。
河豚刺しも美味いが河豚は肝に毒がある。
大分県まで行かないと肝は食えない。
その点、皮はぎは肝OK。
愛媛の松山辺りじゃ、ハギ、ハギと珍重され、
フグより人気が高く、飛び切りの美味さを誇る。

めしとも→のみとも→Zooともと
三段活用を成し遂げた白鶴の白い顔を
目に浮かべながら、白鶴の熱燗に切り替えた。

=つづく=