2025年6月5日木曜日

第3812話 行列の 理由が皆目 判らない

神田川が隅田川に注ぎ込む、
その手前に架かる柳橋。
そのまま地番となって柳橋二丁目は
NYから帰国直後に棲んだ懐かしい町。

その柳橋から上流へ浅草橋、
左衛門橋ときて4つ目の美倉橋。
橋上を清洲橋通りが走っている。
あの美しい清洲橋とつながっているのだ。

南詰に古い日本そば屋がある。
近所と云えないこともないから
何度も通り掛かった。
そのたびに昼どきはけっこうな行列。
並ぶのが嫌いだから未踏のままでいた。

ふと思い立って腰を上げる。
正午を過ぎると待たされるので
11時45分に到着したら
それでも5人並んでいた。
近隣のリーマンはわりかしヒマなんだ。

正午ちょうどに入店がかなう。
すでに男が3人座る卓に押し込められる。
これほどの相席強要は他に例を見ない。
ドライの大瓶を通して、しばし投げ首。

名物はランチタイム限定のしめじご飯。
特に半しめじ飯が人気で
何と165円なのに量もたっぷりあるらしい。

かやく飯や混ぜご飯を好まぬ身ながら
何となく ”半” を通してしまった。
そしてもりもそば半分でお願い。
すべて四人掛けの卓はみな満席。
ものスゴい人気ぶりある。

10分くらい待ったろうか?
まず半しめじが配膳された。
なるほど立派だネ。
油揚げ・豆腐・みつば・わかめ、
具沢山の味噌汁も存在感を放つ。
新香はきゅうり・白菜に
べったら風の大根が2切れ。

でも、食べながら思った。
しめじ・にんじん・油揚げ入り炊き込みは
フツーの白飯のほうがいいんじゃないの?
かやく飯を嫌うから
そう思うのかも知れないけどネ。

そして太打ちのもりそば。
コシは相当強い。
けれどもそばの香りがまったくしない。
これいかに?

周りを見回すと、この暑いのに
8割方は温そばを食っている。
なるほど、そういうことかァ。
入れ替わって座った目の前のカップルも
豚肉南蛮とカレー南蛮だ。

だがなァ、いくら温づゆでも
香り無きそばに明日は無い。
行列の理由が皆目つかめぬ、
創業半世紀に及ぶ、老舗そば屋でした。

「春日」
 東京都千代田区東神田2-2-8
 03-3865-9568