2025年6月18日水曜日

第3821話 臼杵の太刀魚 大分の平目&皮はぎ (その1)

この朝はわりと早起きして出立。
列車は県庁所在地の大分を通り過ぎ、
臼杵へと走ってゆく。
駅前からバスに乗って臼杵郊外へ。

ご当地の名所、60体あまりの石仏群は
国宝に指定されており、
さほど興味は湧かないが
そこは旅先のこと、訪れてみた。
岩壁に刻まれた石仏は
磨崖仏(まがいぶつ)という。
多くの仏さまに頭を下げた。

昼食は石仏観光センターの「郷膳 うさ味」。
名物の臼杵たち重を所望する。
太刀魚の蒲焼き重のことで
臼杵は国内有数の太刀魚の産地なのだ。

ビールは嬉しいことにドライの大瓶。
重箱には柚子こしょうが添えられ、
ほかに大根たまり漬けと
しめじ・豆腐・油揚げの味噌椀。
 
見た目は鰻重そっくりなれど
味わいはずっと軽やか。
物足りなさを感じる向きもあろう。
レギュラー缶を追加し、お代は2830円。

スタッフに車を呼んで貰って町中に戻る。
二王座歴史の道の入口で降り、
武家屋敷や寺院の建ち並ぶ道筋を往く。
でもネ、なんだか綺麗にまとまり過ぎて
時代を感じさせてくれない。
早い話が小樽の運河沿いみたいなんだ。

臼杵城跡にやって来た。
往時は三方を海に囲まれた天然の要塞。
ふと見ると足元に石碑が一つ。

♪ 春は名のみの 風の寒さや
  谷のうぐいす 歌は思えど
  時にあらずと 声も立てず
  時にあらずと 声も立てず ♪

日本人なら誰しも一度は
耳にしたことのある「早春賦」。
作詞した吉丸一昌の記念歌碑である。
42歳で早世した彼は臼杵の出身。

”賦”とは漢詩を歌うことを意味し、
舞台は信州・安曇野とされている。
ちなみに作曲は中田章。

臼杵駅へと歩き、
別府行きの列車に乗って大分へ。
チェックインを済ませたら晩酌どき。
夕まぐれの街に飛び出した。

=つづく=

「郷膳 うさ味」
 大分県臼杵市大字深田833-5
 0972-65-3333