2025年6月9日月曜日

第3814話 北千住の酒場にて (その1)

東京の北東の玄関口、
足立区・北千住は出没率がきわめて高い街。
口座を持つ3つの銀行がすべて
10m 四方のコンパクトな一画に納まり、
便利きわまりないためもある。

この日も銀行のあとで
マイ・ブレイクルーム「幸楽」へ。
当欄でも何度か紹介している酒場だが
今日は面白いことが一つ、
懐かしいことが一つ、それぞれにあった。

いつものようにカウンターへ。
コチ刺しでドライの大瓶を飲んでいると
隣りに常連らしきオジさんが着いた。
ずいぶん立て混んでいて
テーブル席はほぼ満席状態だ。

オジさんは空きができたら
テーブルに移る旨を
ベトナムのオネエちゃんに伝えている。
そう、当店のスタッフは8割方、
ベトナム出身者である。

それはいいとして度肝を抜かれたのは
この直後であった。
オジさんが何を注文したと思いますか?
エッ、お立合い!

いや、ブッタマげやしたネ。
何とオネエちゃんがホッピーの外を
4本も持ってきやがったぜ。
両手で4本まとめて鷲づかみと来たもんだ。

焼酎はキープしている、
ヒズ・ボトルのキンミヤが残り半分ほど。
作るさまを盗み見してると
焼酎はホンのチョッピリ。
そこへホッピーをドバドバドバ。

黙って見てたが我慢し切れず、声を掛けた。
「コレみんな一人で飲むんですか?」
「ええ、そうですヨ」
「スゴいなァ!」
「いえ、肝臓を悪くしましてネ。
 でも好きだから薄くして飲んでます」
ということだったが、それにしてもなァ。

驚かされたのはコレで済まなかった。
彼の発注したつまみ類である。
トマト・冷奴・枝豆の3品が
並んだ、並んだ、赤・白・緑。
これ以上ない定番の揃い踏みだ。
トマトなんかお替わりまでしてやんの。

まさに昭和の光景が拡がる。
ここにラジオの野球中継と
蚊取り線香の豚でも揃えばパーフェクト。

呆れ果てた J.C.、彼の横顔をチラチラ。
つい先日の町屋「ときわ」で
スマホのつまみにやおら野沢菜を
ポリポリやり始めた若い娘の面影が
ダブッて見えたのでした。
世の中に奇人変人は後を絶ちません。

=つづく=