2015年3月6日金曜日

第1049話 昼はカレー屋 夜はバー (その2)

同じ日本橋本石町でも江戸通りの北側(神田寄り)と
南側(日銀寄り)では雰囲気がまったく異なる。
当夜の集いの場、「本石亭」は、より庶民的な神田寄りにある。

ほどなく本日の主役(おそらく新妻)が馳せ参じ、
フルメンバーと相成って乾杯。
この店には生ビールがなく(いや、あったかも知れない)、
サッポロ黒ラベルの大瓶だ。
それをオーナー・バーテンダーが
きめこまやかな泡を立てながらグラスに注いでいる。
読者の方々が周知の通り、泡嫌いのJ.C.だけは
他のメンバーとは真逆に静かに静かに泡を抑え、
炭酸を逃がさずに注いでもらう。

突き出し代わりというか、最初の小皿は砂肝入りのチキンカレー。
スパイスがふんだんに使用されており、
カウンター上空にエキゾチックな香りが立ち上った。
好きなタイプのカレーといえる。

オーナーはちょいと前まで銀座のバーでシェイカーを振っていた。
バカみたいにずうっと、ビールを飲んでいる場合ではない。
好きなカクテル、ホワイトレディをハードシェイクでお願いした。
Kるに愛の告白でもするつもりだろうか、
I田クンは自分のハートに気合を入れて
ドライマティーニなんか頼んじゃってるヨ、オイ、おい。

二番目に現れた皿にはブラジル産のぶっといソーセージが3~4種類。
みんなのために、そのイチモツをナイフ&フォークで切断に及んだA子は
けっこうな硬さに少々持て余し気味だ。
ダイナミックではあるが大味で
ソーセージはブラジルよりドイツのほうがいいな。
先のW杯ブラジル大会でもブラジルはドイツにコテンパンにやられたものネ。
これには珍しいルーマニア産の赤ワインを合わせた。

お次はなぜかスペイン色強いフィリピンの鶏料理、アドボが出てきた。
あれは34年前、フィリピンはルソン島北部のバギオで食べた記憶がある。
特徴のない鳥の煮込みにイタリア南部のアリアニコ種赤ワインに切り替えた。

何か小品が1~2種類出たような気もするけれど、まったく忘却の彼方。
それでも締めのガーリー・ファンは覚えている。
いわゆる中華のカレーライスである。
オーナー曰く、インド在住の中国人が食べているカレーなんだと―。

おっと、主役・Kるのサーネーム・チェンジの件だった。
華燭の典にはほど遠く、事情があって母方の姓に戻しただけとのこと。
これを聞いたI田クンは胸をなでおろし、”生きる歓び”満喫と相成った。
おかげで彼、二次会のカラオケはノリにノッてしまったネ。
あまりのすさまじさに肝心のKるがドン引きの巻。
これじゃ、まとまるものもまとまらんぜ、アーメン!

「本石亭」
 東京都中央区日本橋本石町4-4-16
 033272-2909