2015年3月24日火曜日

第1061話 なんとなく再びエスニック (その3)

谷中の名所・夕焼けだんだんの上、
エスニック中華の「深圳(しんせん)」にいる。
ノドの渇きを鎮めて一息つき、肴の吟味に思いを致す。
ところが適当な小皿がトンと見つからない。
それもそうだヨ、「深圳」は料理屋というより、
飯屋と呼ぶほうが当たっているのだ。
さして多くもない品書きをつぶさに観察すると、
そのすべてが一膳飯ならぬ、一皿飯なのであった。

披露してみようか。
最初に”おすすめ!”と明記された3皿。

 ニラと豚丼レモン醤油味 800円
 辣油がけラム肉丼 950円 
 辣油がけパクチーラム丼 1200円

加えてこちらは定番らしい。

 ラムとパクチーの炒め飯 1000円 
 ラムのジンギスカン風炒め飯 900円
 ラムのカレー風味炒め飯 800円

一見して幅を利かせているのはラム肉とパクチーだ。
深圳は広東省だから主として食されているのは広東料理。
彼の地でラムはポピュラーな食材とはいえない。
北京料理の羊肉しゃしゃぶをはじめ、
中国北方で好まれるのがラム肉なのだ。

パクチー(中国では香菜)にしたって
代表的広東料理、鮮魚の清蒸にあしらわれることはあっても
主役にはほど遠い存在だろう。
まっ、ああだこうだと理屈を並べても始まらない。
イーティング・イズ・ビリーヴィングでまいりましょう。

当夜は迷いに迷った。
だって、ポーション小さめの皿を2~3品という、
普段から馴れ親しんだ選択肢がハナからないんだもの。
熟考を重ねた末にたどりついたのがコレだった。
ラムとパクチーの炒め飯
トマトを浮かべたスープはクローヴ効きすぎ。
デザートはパイナップル風味のヨーグルトで
これはあってもなくてもいい。
肝心の炒め飯のベースは玉子炒飯、その上にラムのソテー、
そしててんこ盛りのパクチーときたもんだ。
あまりのパクチーの量にラムが隠れて見えない。

箸先でラムを探すわが心境は
富士山麓の青木ヶ原樹海で行方知れずとなった、
人々の亡骸(なきがら)を捜索するが如し。
とにかくパクチーの絶対量が多いし、
固い茎まで入っているから大いにバランスを欠く。

漫画家のやくみつるによく似た店主には悪いが
もうちょっとやりようがあると思うんですがねェ。

=おしまい=

「深圳(しんせん)」
 東京都荒川区西日暮里3-14-13
 03-3824-5668