2015年3月25日水曜日

第1062話 ボナセーラ・トライベッカ (その1) 古く良かりしニューヨーク Vol.8

およそ1年半ぶりの”古く良かりしニューヨーク”シリーズです。
読売新聞のNY現地版、読売アメリカの連載コラム、
J.C.オカザワの「れすとらんしったかぶり」からの回顧版であります。

=ボナセーラ・トライベッカ(上)=

今月の晦日から3日間にわたって開催される”第4回読売グルメ倶楽部”。
此度はロバート・デ・ニーロがオーナーの人気店、
「Nobu」でのランチということもあり、
受付開始後3時間で締切りとなった。
しかも50名以上の方々がウェイティング・リストにお名前を連ねている。
読売の担当者、M嬢も早急に次回の企画を練り上げた様子、
主催者として参加できないみなさんの寛大なご理解を賜りたいと存じます。
どうぞ、お許しください。

マンハッタンの素敵なレストランの宝庫となったトライベッカ。
トライベッカとは、Triangle below Canal の略。
そう、カナル・ストリート下の三角地帯という意味だ。
「Nobu」もその一郭にある。
今週から二週にわたり、トライベッカのイタリアンを攻略してみたい。

以前、この欄で紹介した
カリフォルニア風タイ料理の「Tommy Tang’s」。
その後、客足が落ちて閉店の憂き目をみた。
その跡地にオープンしたのが「Gigino」。
壁を塗り替えただけで雰囲気が変わり、
ネオ・リアリズモのイタリア映画を観ているようだ。

単一の地方に固執しないその料理は、やや南の匂いが勝っているかな?
パスタが個性的だ。
バーリ風カヴァテッリ、ポジターノ風ラヴィオリのほかに
定番のリングイニ・ヴォンゴレ、ペンネ・アラビアータ、
スパゲッティ・ペスカトーレ、タリアテッレ・ボロネーゼも。

インパクトの強さではスパゲッティ・パドリーノが断トツだ。
ビーツ(赤大根)の繊切りをたっぷり使うため、
スパゲッティが真っ赤に染められている。
パドリーノはゴッドファーザーのこと。
皿の上は血塗られて流血の大惨事状態だ。
ところはコイツがヤケにうまい。
もともとビーツは好まぬ食材ながら
ロシア料理のボルシチとここのパドリーノだけには太鼓判を捺す。

焼き上がり香ばしく、肉汁あふれる仔牛のグリルの香草は
使用されているタイムよりローズマリーのほうが好ましい。
ピッツァとカルツォーネにも力を注いでいるのが大衆的で好印象。

トライベッカのイタリアンの覇者的存在、「Arqua」。
パスタが魅力にあふれている。
季節になったら白トリュフのタリオリーニが断然。
サルシッチャとフェンネルのパッパルデッレも非の打ち所ナシ。
生ハムに添えられた小粒な黒イチヂクの美味しかったこと。
こんなイチヂクなら子どもたちも浣腸を怖れまい。
何のこっちゃい?

=つづく=